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担当者:安達竜哉
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【認知症に備えて】家族信託について解説!
新しい財産管理のやりかたとして、家族信託という制度が近年注目されてきています。
誰でも活用しやすく認知症への対策にも良いという家族信託とは一体どんな制度なのでしょうか?
活用事例を踏まえつつ、メリット・デメリットも含めて詳しく解説してゆきます。
家族信託って?
家族信託とは、簡単にいえば「自分の保有している財産の管理や処分を、信頼できる家族などに任せられるようにするための制度」です。
例えば認知症などによって、自分自身の持つお金や不動産など財産の管理ができなくなってしまう事態に備えておくための新しい手段として、近年テレビなどでも取りあげられ注目されています。
投資信託などと違って財産管理を任せる相手が家族など近しい人間と想定されているので高額な報酬を支払うことなく利用でき、財産の多い少ないに関係なく誰でも活用しやすいのが大きな特徴です。
家族信託の実際の仕組みですが、「委託者」「受託者」「受益者」の3人を当事者として考えます。
・委託者=自身の保有している財産を託す人間。
・受託者=委託者から託された財産を管理・運用・処分する人間。
・受益者=受託者が託された財産から生まれた利益を受け取る人間。
この通り「委託者の持つ財産を受託者が管理し、そこから生まれた利益を受益者が受け取る」というのが一連の流れです。
委託者と受益者は同一人物でも問題はなく、そのパターンであれば贈与税がかからないため、多くのケースでは委託者本人が受益者となっています。
家族信託はどんな時に活用すべき?
どんなケースで家族信託を活用することができるのでしょうか。
一例を紹介します。
①認知症への対策
自分自身が認知症になり物事の判断能力が低下した時のために、あらかじめ健康なうちから家族信託で子供などに財産管理を任せておくようにすれば、実際にそうなってしまった時に慌てずに済み、リスクを軽減することができます。
似たような制度として成年後見制度(任意後見)というものがあり、そちらでも同じように「いざ」という時近しい人間に財産管理を任せることはできますが、そちらでは実際に認知症などになってしまってからでなければ後見人に財産管理を委任することができません。
財産管理のノウハウのない相手にいきなり管理を一任するという状態にもなりかねず、備えとしては不安が残ります。
ほかにも後見人が高額な財産を処分する際には家庭裁判所の許可が必要になるなど柔軟性に欠ける部分もあります。
家族信託であれば自身が元気なうちから受託者に財産管理を任せることができ、当事者同士の信託契約によって柔軟に財産を管理処分することが可能です。
②自分では財産管理の難しい子供に財産を残す場合
例えばまだ幼かったり、障がいがあったりで、自分自身で財産管理をさせるのは難しい子供へ財産を残したい場合に、家族信託によって信頼のできる親戚などを受託者として財産管理を任せ、子供を受益者として利益を渡せるような流れをつくることができます。
家族信託ならば遺言とは違い、親である委託者が生きているうちからそういった流れをスタートできるので、実際に委託者が亡くなった後どうなるのかシミュレーションをしておくことが可能です。
③事業承継への活用
会社経営などの事業をしている人が次の経営者へ事業を引き継ぐことを考えた場合に、自社株を承継する方法のひとつとして家族信託という選択肢があります。
家族信託で事業承継を行うメリットとしては、次の代のさらに次の代以降まで、経営者を誰にするかを信託契約によってあらかじめ定めておけることが挙げられます(ただし信託契約を設定してから30年が経過して以降の代替わりについては、定めておくことができるのは1代限りとなります)。
家族信託のメリット・デメリットは?
家族信託を利用するとどのようなメリットとデメリットがあるのかを紹介してゆきます。
メリット①柔軟な財産管理が可能
家族信託であれば、財産を保有する本人(委託者)の意思確認の手続きをとらずに財産の運用や処分を行うことができます。
つまり委託者の判断能力に左右されることなく財産管理を行えます。
委託者が高齢で健康状態が悪化していたり認知症になっていたりという場合でも滞りなく運用が可能というわけです。
また、成年後見制度では後見人が毎年家庭裁判所へ報告を行うことが義務づけられ、財産の運用方法にも様々な制約が設けられていますが家族信託にはそういった義務や制約がなく、あらかじめ委託者と結んだ信託契約の範囲内であれば、受託者は積極的な投資を行ったり資産の組み換えなどの相続税対策を行ったりと託された財産を柔軟に扱うことができます。
委託者が元気で判断能力のあるうちから受託者による財産管理を始めることができるのも大きなメリットです。
メリット②遺言書の代わり+αのことが可能
家族信託には遺言と同じような機能もあり、契約書によって遺言書の代わりを果たすことができます。
遺言書は民法で定められた厳格な形式・方式にもとづいて作成しなければなりませんが、家族信託を利用すればそのような形式・方式によらず財産の相続について柔軟に取り決めをしておけます。
例えば認知症で自身での財産管理が難しい家族に財産を残しておきたい場合に、他の人間を受託者として財産管理をしてもらい、認知症の家族を受益者に指定して利益を受け取らせる、というようなことも可能です。
メリット③財産承継の順位づけが可能
家族信託では自分が亡くなったときの遺産を相続する順位をあらかじめ決めておくことが可能です。
生前贈与や遺言書による相続とは違い、はじめに選んだ受益者が亡くなった場合などに次の受益者を誰にするかを委託者自身の意思で指定しておくことができ、無用な相続のトラブルを防ぐことができます。
メリット④倒産隔離機能の活用が可能
家族信託には倒産隔離機能というものがあり、事業の倒産などによって委託者自身や受託者が信託財産に無関係な多額の債務を抱えてしまった場合でも信託財産が差し押さえられることはありません(受益者が強制執行などを受けてしまった場合は別)。
将来的な差し押さえのリスクに備えておくことができるわけです。
デメリット①受託者の選定が大変
家族信託では受託者に財産管理の権限を与えて委託者自身の意思確認も必要とされない状態で運用してもらうわけですから、当然ながら受託者には相当信頼できる相手を慎重に選ぶ必要があります。
もしいい加減な管理をする人間を受託者に選んでしまえば、大変なトラブルになってしまいます。
また、財産の名義自体が受託者のものになるので、そこに抵抗感を持たれるケースも多いようです。
デメリット②成年後見制度や遺言でしか不可能なこともある
家族信託は財産管理を他人に任せるという点では成年後見制度よりも柔軟に行うことができますが、成年後見制度とは違い身上監護という機能がないため受託者が病院への入院や施設への入所手続きを代行することができず困る可能性があります(基本的には受託者が家族であれば手続き可能なケースがほとんどです)。
また、家族信託では実際に相続が行われる時点での全財産を契約書に含めておくことは難しいので、全財産を思い通りにスムーズに相続させるには遺言書を併用する必要があります。
デメリット③節税効果は薄い
家族信託では受益者に税金が発生します。
委託者本人が受益者である場合を除いて、受益者が贈与税を払い続けることになります。
もちろん相続の際の相続税もかかってきますので、家族信託の節税効果にはあまり期待することができません。
デメリット④遺留分侵害額請求の対象になる可能性がある
遺言の内容などによらず、一定範囲内の親族であれば最低限の遺産を受け取ることができる「遺留分」というものが定められており、その遺留分を満たした額の遺産を貰えなかった(遺留分侵害)場合には「遺留分侵害額請求」というものを行うことができます。
そもそもは遺言や遺産分割協議によって遺留分侵害が起こった場合が対象となるものなのですが、家族信託による相続もその対象なのではないかという議論があります。
家族信託という制度自体がまだ新しく、現状では専門家によって意見が分かれている状態なのですが、今後どのような判例が出てくるか要注目ですね。
まとめ~大切な家族のために~
いかがでしたでしょうか。
今回は家族信託という財産管理の制度について見ていきました。
例を挙げたように様々なメリットもデメリットもある新しい制度ではありますが、従来からポピュラーな制度よりも間口が広く、誰でも柔軟な財産管理ができるという大きな可能性を持っていますね。
認知症への備えとしても注目されている家族信託ですが、この超高齢化社会において認知症の家族や親類の問題は誰においても決して他人事ではないトピックスですし、自分自身がそうならないという保証もありません。
それが全てというわけではないにしろ、やはり生きていくうえでお金は欠かせないものなので、円滑な財産管理は円滑な人生設計の遂行にもつながります。
自分や大切な家族の幸せのためにできることを、今一度じっくり考えてみたいですね。
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