JR奈良駅旧駅舎~奈良観光案内所に秘められた歴史~
JR奈良駅東側にあるレトロな建物・・・現在は奈良市総合観光案内所としておなじみですね。
この建物はもともと、奈良駅の駅舎として活躍していました。お寺っぽい建築のようで、どこか洋風っぽさも感じる不思議な魅力を醸し出す駅舎は、観光客だけでなく地域住民の皆さんにも大変愛されています。
今回はそんな旧駅舎の歴史と、観光案内所をご紹介します。
明治23年開業時には、和風の木造平茶建ての駅舎が建てられていましたが、昭和9年に寺院風和風と鉄筋鉄骨コンクリート造の近代的構成の折衷洋式の2代目駅舎が建てられました。屋根の上の九輪や四隅の風鐸(風鈴のようなもの)、建物内部の格天井(ごうてんじょう) そして柱や壁面にあしらわれた古代文様のレリーフには寺院建築の影響が、内部の大きな柱には洋風建築の影響が感じられます。
近代の洋風建築の例は少なくないのですが、この駅舎のような和洋折衷の建築は例が少なく、日本の近代建築の特色を表すものとしてはとても貴重であるとされています。
1986年に国鉄が民営化しJRとなってからもこの駅舎は奈良の玄関口として長く愛され続けましたが、2001年にJR奈良駅付近の連続立体交差事業により、一時は取り壊されることが決定しました。しかし、奈良を愛してくれている観光客や地域住民からの存続を願う声や、駅舎自体の文化的価値などを考慮した結果、駅舎の保存・再利用が決まりました。
駅舎は2004年、曳家(建築物を解体せずそのままの状態で移動する建築工法)により、北東18mのところに移動しました。
そして2009年7月、奈良市総合観光案内所としてオープンし、現在に至っています。
取り壊しから一転、保存・再利用に至る際、旧駅舎は2007年に経済産業省より「地域活性化の役に立つ近代産業遺産」として認定されたり、2011年には土木学会選奨土木遺産とされたりと、文化的価値をさらにたかめることとなりました。 現在は国内外の観光客に気持ちよく奈良を楽しんでいただくために、さまざまなサービスを提供するスペースとして機能しています。
奈良市総合観光案内所では、さまざまな国から訪れる観光客に対応できるよう、ソフト面でもハード面でも充実を図っています。
多言語対応を可能にするため、対応可能なスタッフを常駐させたり、パンフレットもさまざまな言語で準備しています。
他にも手荷物預かり所、外貨両替機、祈祷室、多機能トイレ、授乳室など外国の観光客だけでなく、障害を持つ方や小さなお子さん連れの方などにも対応できるよう、設備が充実しています。もちろんFree-WiFiスポットにもなっていますよ。
そして観光に役立つパンフレットはもちろん、「なライブラリー」という奈良に関する資料も閲覧できます。
また、休憩したりタブレットを見ることができるカフェスペースとして2016年に「スターバックス」がオープンしました。
店内席19席、テラス席26席の合計45席が用意され、カフェスペースには奈良県産の杉や奈良晒(ならざらし)という麻生地を使用することで、和洋折衷建築の駅舎に自然になじんだ内装になっています。
スターバックスがオープンして以来、観光案内所内に入ると香ばしいコーヒーの香りが広がっているのを感じます。
また、案内書のカウンター前には奈良のゆるキャラ、しかまろくんがお出迎えしてくれます。
JR奈良駅は、天王寺まで約30分、大阪難波駅まで約40分、JR京都駅まで約1時間という、交通アクセスの観点からは申し分のない場所。駅からは市内循環バスを始め奈良交通バスの交通網が奈良市内のあらゆる町に張り巡らされており、観光に来る人にとっても、奈良に住んで奈良県外に出かける人にとっても、まさに玄関口の役目を果たしています。
そしてJR奈良駅周辺は歴史遺産が多数あるのはもちろん、生活するのに必要な施設や店舗も徒歩圏内に揃っています。観光地の空間におもてなし感と同時に生活感も感じられる空間なのが奈良の良さとも言えます。なので、観光地のど真ん中に住むのもアリですよ。
JR奈良駅周辺には、その利便性によりおひとりさま向けからファミリー向けまで多彩な物件が揃っています。観光地で日常生活を過ごしながら、呼吸をするように観光客のおもてなしをするのも素敵な暮らしかもしれませんね。