【旧生駒トンネルって何?】開通までのあゆみや現在ついて
かつて近鉄奈良線の要だった「旧生駒トンネル」とは?

奈良市と大阪市の中心部をつなぐ近鉄奈良線。
この路線の要としてかつて利用されていた長いトンネルがありました。
現在では「旧生駒トンネル」と呼ばれるこのトンネルについて、作られた当時からの歴史や現在はどうなっているかなど、詳しく解説していきます。

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賃貸専門家:古川 真史
資 格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
奈良在住25年以上。宅地建物取引士・賃貸経営管理士の資格保有。ルームアドバイザーとしてのキャリア18年以上の大ベテラン。不動産賃貸の関連はすべて媒介経験あり。奈良出身ではないのに奈良まほろばソムリエ検定(奈良通1級)取得する奈良への溺愛っぷり。奈良マニアの古川より独自な目線で賃貸情報を多数お届けします。
ふたつの「生駒トンネル」

奈良県生駒市と大阪府東大阪市の境にある生駒山。
NHKの連続テレビ小説『舞い上がれ!』にも登場した生駒山上遊園地や、生駒聖天の名で親しまれる宝山寺がある場所として知られていますね。
その生駒山を東西に貫くのが生駒トンネルで、近鉄奈良線が山を越え奈良と大阪を結ぶための重要なルートとなっています。
「生駒トンネル」と名のつくトンネルは複数あり、生駒駅と石切駅の間にあり現在利用されているのが「新生駒トンネル」。
そして、その新生駒トンネルの北に並行して存在し、かつて生駒駅と孔舎衛坂駅(くさえざかえき・現在は廃止)を結んでいたのが今回ご紹介する「旧生駒トンネル」です。
旧生駒トンネルはどんなトンネル? 開通までのあゆみ

旧生駒トンネルは1914年(大正3年)、まだ近鉄が前身である大阪電気軌道(大軌)だった時代に完成しました。
奈良と大阪を結ぶ重要な路線を開通させるにあたって、生駒山を越え両都市の駅を最短距離でつなぐために社運をかけてつくられたものでした。
生駒山越えの方法についてはケーブルカーを使う案など全部で4つの候補があり、最終的にこのトンネルを通す案が選ばれたそうです。
トンネルの全長は3,388メートル。
当時日本国内にあったトンネルのなかでは、中央本線が走る笹子トンネル(山梨県・4,656メートル)に次いで2番目の長さ、標準軌の複線としては日本最長を誇っていました。
その長さもあって工事は簡単ではなく、1911年(明治44年)6月1日からスタートしたトンネルの掘削作業は完成までに33ヶ月もの期間を要しました。
掘っていくにつれ地質の悪さや湧き出る地下水に悩まされ、おまけに十分な電力供給が間に合わず停電が繰り返し起こったために、ひどい時は1ヶ月に30センチメートルしか掘り進まないということもあったそうです。
また、1913年(大正2年)1月には掘削工事中の落盤事故も発生し、多数の死傷者が出てしまいました。
まさに難工事だったのです。
しかし大軌と工事を請け負った大林組がともに社運をかけた工事の甲斐あって、1914年1月31日には生駒山を東西に貫く穴が出来上がり、同年4月18日についにトンネルが完成しました。
そして同年4月30日、晴れて奈良駅(当時は仮駅)~上本町駅(大阪)を結ぶ路線の営業が開始。
営業開始後しばらくは、トンネル掘削工事に莫大な費用がかかったことに加え、路線の運行による収入も不安定だったため、大軌は深刻な資金不足に頭を痛めることになりました。
『近畿日本鉄道100年のあゆみ』という資料によれば、生駒山の宝山寺に乗車券をまとめて購入してもらい、その代金を社員の給与に充てるということさえあったそうです。
ですがそういった経営難も無事に乗り越え、大軌はそのあと積極的に路線の拡大を進めていきました。
ちなみに大林組は、旧生駒トンネルと並行して1911年から1914年まで東京中央停車場(現在の東京駅)の建設工事も請け負っていました。
くしくも東西の鉄道における重大なプロジェクトを同時進行させるかたちとなっていたのです。
世代交代と旧生駒トンネルの現在

その後50年間、旧生駒トンネルは奈良~大阪間の移動の要として人々を支えてきました。
そうして戦後の1964年(昭和39年)、輸送力増強に対応すべく開通した新生駒トンネルにバトンを渡すかたちで、半世紀続いたその役目を終えることとなりました。
現在、大阪側のトンネル入口は立ち入り禁止となっているものの、新生駒トンネルから続く避難路が7か所設けられ非常時の備えとなっているほか、乗務員の訓練にも使用されています。
また、東側(奈良側)の一部は1986年(昭和61年)開業のけいはんな線(開業当時は東大阪線)の「生駒トンネル」として現役で活用されています。
そして2009年(平成21年)、旧生駒トンネルは経済産業省より「近代化産業遺産」の認定を受けました。
近鉄創業100周年を迎えた2010年(平成22年)など、複数回にわたってトンネル内部の見学ツアーも実施されています。
2022年(令和4年)11月12日には旧生駒トンネルを用いた一風変わったイベントも開催されました。
トンネル内に特設のステージが設けられ、大阪芸術大学の学生による吹奏楽の演奏会が行われたのです。
演奏においては非常に特殊な環境であるため、現地でのリハーサルでは湿度の高さや長い残響への対応に学生さんが苦労される場面もあったようですが、本番ではクラシックの名曲や最新のポップスなどが約1時間にわたって演奏され、盛況のうちに幕を閉じました。
まとめ~鉄道の歴史に思いを馳せて~

いかがでしたでしょうか。
今回は近鉄奈良線を利用する人々を半世紀にわたって支えた「旧生駒トンネル」について見ていきました。
近鉄は現在、奈良観光にスポットを当てた新しい試みをいくつも行っています。
近鉄奈良駅に「奈良公園前」という副駅名をつけたり、神戸三宮と奈良を結ぶラッピング列車「ならしかトレイン」の運行を始めたり、ダイヤ改正にともなって観光特急「あをによし」を増発したり――そういったなかで、今後また旧生駒トンネルを舞台としたイベントも行われるかもしれませんね。
知るといつもの路線の景色が少し違って見える、そんな鉄道の歴史のお話でした。
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