実はこのエリアに、明治建築を彷彿(ほうふつ)とさせる素敵なスポットがあるんです。奈良市はわかるけど、どちらかというと学研都市ニュータウンのイメージが強い木津川市に明治のレトロスポットがあるなんて意外に感じられるかもしれませんね。
それが、これから紹介する「大仏鉄道の遺構(いこう)」です。
奈良市法蓮町にあります「大佛鐵道記念公園(だいぶつてつどうきねんこうえん)」からJR加茂駅までの間に時々見られる古い鉄道跡。実は奈良駅~加茂駅間にかつて、大仏鉄道と呼ばれる鉄道が走っていたのをご存知でしょうか。
(大佛鐵道記念公園。かつてここに大仏駅がありました)
時は明治、たった9年間でしたが、奈良駅から加茂駅を結ぶ鉄道がありました。 1898年(明治31年)4月19日に、上記の大佛鐵道記念公園にありました「大仏駅」から加茂駅までを走るとして開業されました。
この大仏鉄道は関西鉄道の一部で、当時は最新式のアメリカ式蒸気機関車が走り、市民の生間でも憧れとともに大変親しまれていたとされています。
ところが残念ながら、途中「奈良山越え」と呼ばれる急な勾配があり、蒸気機関車を走らせることが困難だったため、木津経由の新しいルートに変更することとなり、1907年(明治40年)8月21日、惜しまれつつも廃止となりました。
この大仏鉄道の遺物が今も、路線があった周辺各地に遺されており、現在は観光スポットとなって、インスタ映えスポットとしてもハイキングコースとしても親しまれています。
では、大仏鉄道ゆかりのスポットをご紹介しましょう。
JR奈良駅北側にある船橋商店街を抜け、佐保川を越えると、正面に小さな公園が見えます。
ここに大仏駅がありました。もともとは三角公園と呼ばれ、近隣住民の皆さんに親しまれていましたが、平成4年に大仏鉄道を記念した記念公園に変わりました。園内には記念碑や機関車の動輪モニュメントがあり、ここに確かに大仏駅が存在したことを伝えています。モニュメント付近には大きな枝垂桜(しだれざくら)が植えられており、春には見事な桜を見物することができます。
大佛鐡道記念公園周辺は奈良の観光地の中心部でありながらも、どちらかというと昔ながらの住宅や最近になって建てられたマンションやアパートが多く、観光地というよりも生活空間という感じのエリア。奈良女子大学に近いため、学生さんも多く住んでいる町です。このような観光スポットがあるのは少し意外かもしれませんね。
大仏鉄道唯一のトンネルがあったとされています。
陸橋(りっきょう)の下にレンガのトンネルが存在していました。
案内図中央の茶色の枠内に、かつてのトンネルのイメージ図が載っています。
運航路線のなかでも最も高い場所とされ、通行が困難な箇所と言われていました。いわゆる「奈良山越え」と言われていた場所です。
廃線後もトンネルは残されていましたが、高度成長期の1964年に撤去されました。
市道44号線下にある、農業用水路用として作られた細いトンネル。
現在も用水路として利用されています。
中を覗くとこんな感じです。
美しいアーチを描いたレトロ感満載の造りで、明治の遺物の雰囲気を感じやすくインスタ映えするスポットですが、見学者用に整備もされておらず、足場もいいとは言えないので見学される方はお気を付けください。
※このあと奈良県より京都府に入ります
赤レンガと黒レンガを交互に積んで作られている用水路用のトンネルです。この色違いのレンガは加熱温度の違いにより作られたもので、黒レンガは「焼き過ぎレンガ」と呼ばれているそう。
トンネルには柵があり、立ち入り不可となっていますが、色違いレンガの美しさを見るだけでも楽しめます。
また、松谷川隧道の近くには関西鉄道の社章モニュメントがあります。
梅谷交差点の近くにあり、現在は道となっているため、当時の痕跡はありませんが、橋梁跡について解説する看板が見られます。
当時の造りがしっかり残っているレンガ造りの橋台。
本体はレンガ積み、コーナーは御影石(みかげいし)を積んで作られています。インスタ映えスポットとしておススメです。
周辺には竹藪(たけやぶ)が見られます。
上半分がレンガ積み、下半分が石積みのトンネルです。
他の遺構に比べ、保存状態が良いため、現在もトンネル内を行き来しながら見学が可能です。
上の写真の反対側はこのようになっています。
トンネルをくぐった後も森のトンネルが続いているようですね。
花崗岩(かこうがん)の石積みの橋台です。年月を重ねた石の色つやが美しく、周辺の木々とのコラボレーションが素敵です。
観光客からも特に人気のスポットとされています。見物&写メ必須です!
現在も利用されている関西本線の橋台と並んで残っています。
実はどちらもほぼ同時期に作られたもの。見比べてみるとおもしろいです。
というか、今も現役で使用できるところがスゴイですね!
いよいよ加茂駅に近づいてきました。
ずっと山道を通ってきましたが、このあたりから南加茂台などの住みやすい住宅街が見えてきます。ハイキングで渇いたのどを潤す飲み物を買えるスーパーやコンビニ、カフェもちらほらと。ガンバレ!
鉄道の照明に利用する油や、機関車を走らせるために使用する燃料を保管していたレンガ造りの小屋です。これぞ、明治レトロを感じる建造物!
ランプ小屋より少し歩くと、「貴婦人」という名のSLが展示されているところがあります。
大仏鉄道終着駅です。
加茂駅には動輪モニュメントと、大仏鉄道について解説されている看板があります。
歴史と言えば奈良、と思いがちですが、奈良に隣接している木津川市も歴史スポットがこんなにあるんです。
本来木津川市は学研都市として有名で、大仏鉄道遺構のある周辺とはまた違う顔を持つ、利便性の高い街です。木津川市では特に梅美台、相楽台、兜台などのニュータウンが学研都市の中に多く、交通の便や商業施設、教育施設が整備され、大阪や京都、奈良への通勤・通学する人々のベッドタウンとして機能しています。
利便性と歴史的遺構が上手に溶け合いながら共存する、不思議な魅力を持つ木津川市にぜひ住んでみませんか。新婚さんや単身の方、ファミリーの方などさまざまな家族スタイルに対応した物件が揃っています。
また、大佛鐡道記念公園周辺には女子学生も安心して住めるセキュリティ機能の高い物件や女性専用物件などが豊富です。
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