【2023年春完成予定JR奈良線の大改造】複線化でダイヤはどう変わる?
「2023年春完成予定」JR奈良線の大改造 複線化でダイヤはどう変わる?

百年以上前から奈良と京都を結ぶJR奈良線では現在「第2期高速化・複線化事業」が行われています。
全体の6割強の複線化を主要な目的としたこの事業の詳細および複線化が行われる背景、そして複線化によるダイヤ変更の見込みなど、詳しく解説していきます。

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担当者:古川真史
【奈良に住んで20年】奈良を誰よりも愛し続ける奈良ヲタク。人気グルメから人口や歴史、鹿の生息数。何でも答えます。最近は大仏プリン推し。
JR奈良線の「第2期高速化・複線化事業」とは?

古都・奈良と京都を結ぶ鉄道路線のひとつ、JR奈良線。
開通より120年あまりの歴史を持ち、多くの区間を単線(上り・下り両方の運行を1つの線路のみで行う)が占める路線です。
このJR奈良線で今まさに、大改造工事が行われています。
「第2期高速化・複線化事業」と名付けられたこの改造計画では、2022年2月までに新田駅~城陽駅間2.1キロ、同年5月までに山城多賀駅~玉水駅間2.0キロの複線化が済んでおり、現在はJR藤森駅~宇治駅間9.9キロの複線化工事が来年2023年3月の供用開始を目指して進められています。
これで、1998年から行われた「第1期高速化・複線化事業」と合わせて京都駅~城陽駅間の20.2キロ、奈良線全体(京都駅~木津駅)のおよそ64%の複線化が達成されることになります。
京都駅~JR藤森駅間および宇治駅~新田駅間の複線化(合計8.2キロ)が行われた第1期事業から複線化率が24%→64%と一気に向上する、文字通りの大改造です。
事業費397億円(うち101億円をJR西日本が負担。残りは京都府および沿線の市町村が負担)という額の大きさからも、今回の第2期事業の規模の大きさがうかがえますね。
複線化工事の背景には「過密ダイヤ」が

奈良線のこのような大改造計画をJR西日本が行う背景には、「過密ダイヤ」の問題があります。
現在の奈良線では、日中1時間あたりの片道の運行本数を見ると、普通が2本とみやこ路快速が2本、さらに京都駅~城陽駅間を運行する区間列車が2本走っています。
全体のおよそ4分の3が単線であるなかでこの本数の多さは、全国的にも類を見ないレベルの過密ダイヤと言えます。
JRが発足した1987年の時点では、京都駅~木津駅間は全区間が単線で、日中1時間あたりの片道の運行本数は1~2本、朝夕のラッシュ時でも最大3本という状況でした。
そこからJRの民営化にともない奈良線の機能向上・設備改良が進められ、1991年3月には普通列車が1時間あたり最大4本に増発され、新たに快速列車も設けられました。
そして前述の「第1期高速化・複線化事業」によって一部区間で上り・下りの行き違い待ちが不要になったため、快速列車を中心としてさらなる増発が行われることとなりました。
その結果奈良線の輸送力は増強されましたが、問題も発生しました。
限界ぎりぎりの過密ダイヤで動いていますから、トラブルや悪天候などによる遅延の影響が非常に大きく広範囲にわたり、一度ダイヤが乱れてしまうと回復に長い時間がかかってしまうのです。
宇治市・城陽市など奈良線沿線のまちづくりが進み通勤・通学手段としての奈良線の需要は拡大しています。
さらにコロナ禍以前には観光輸送が増加――とくに伏見稲荷大社を訪れる外国人観光客は2013年~2018年までに8倍にまで増加しました。
そのような状況下で輸送の安定性に不安を抱える現状は、大きな問題と言えます。
また、同じく京都~奈良間を結ぶ近畿日本鉄道(近鉄)に、本数・所要時間・運賃という面で差をつけられているという厳しい現実もあります。
JR奈良線の第2期高速化・複線化事業はそういった背景のなかで、過密ダイヤを解消し乗客の安定輸送をはかるべく行われることとなったわけです。
複線化でダイヤや移動時間は変わる?

では、今回の高速化・複線化事業で奈良線のダイヤはどう変わるのでしょうか。
結論から言えば、少なくとも2023年春のダイヤ改正では大きく変更はなさそうです。
というのも、今回の事業の目的は前述の通り過密ダイヤの解消による輸送の安定化にあります。
第1期事業などによって増発が行われ輸送力が飛躍的に増強された。
ならば次はこれまでの輸送力増強策で生じた問題に対処する、そのための第2期事業というわけです。
実際、JR西日本は今回の事業に関する公式文書にて列車の増発が目的ではないことを明らかにしています。
ですから、当面はダイヤが大きく動くような変更はないと思われます。
ただし、完全に変わらないというわけではありません。
複線化が行われる区間ではこれまでに生じていた上り下り列車の行き違い待ちが解消されるため、そのぶん移動時間が短くなる場合があります。
具体的にどのように変更があるかはまだ分からないものの、移動時間の短縮にともなった数分程度のダイヤの調整は、2023年春のダイヤ改正で生じてくるはずです。
とはいえダイヤの変更に関しては憶測の域を出ないため、JR西日本からの正式なアナウンスが待たれます。
複線化工事はとっても難しい

余談にはなりますが、営業中の単線の複線化はそう簡単なことではありません。
通勤・通学など、鉄道は多くの人々にとって重要な生活上の足となっていますから、「工事をします」と言って列車を何日も止めてしまうわけにはいかないのです。
そのため列車を運行させながら工事を進めてゆくのですが、これがまた大仕事です。
仮の線路を設置して列車をそちらに走らせながら元の線路を撤去、そののち複線化を進めていくという面倒で時間のかかる作業が必要になります。
複線化は全く新たな路線を設けるよりも難しいと言ってよいかもしれません。
線路を増やすぶんの新たな用地の確保や、工事にともなう騒音・振動への沿線住民の理解も課題になります。
今回のJR奈良線の複線化においてはそういった課題とともに、黄檗駅~宇治駅間にある宇治川橋梁の増設工事が大きな難所となりました。
宇治川橋梁はもともと単線用だったため、複線化のためには橋梁をもうひとつ増やさなければなりませんでした。
ですが、橋梁を新たに作るのは大変なことです。
橋脚を建設するためにはまず河底を掘る必要があります。
しかし掘ったところから事前調査では分からなかった想定外のものが出てきて工程に影響をおよぼしてしまうケースがしばしばあります。
河川が氾濫しやすい6月~10月は出水期と言って工事が行えません。
もし工程が狂って出水期と重なってしまえば半年ほど工事が遅れてしまう恐れがありました。
おまけに景観規制のため鉄道用の橋梁でよく見られるトラス橋(三角系の補強材が上に設けられた橋)ではなく他の構造を採用せざるをえず、さらに工事の基地としたい場所に踏切があるという頭の痛い問題も発生しました。
踏切の問題は、地元自治体の協力で踏切をくぐる新しい道路が敷かれたことにより解決しました。
このように難しい複線化工事ですが、地元の理解・協力もあり現在佳境を迎えています。
まとめ~奈良から京都へ 京都から奈良へ~

いかがでしたでしょうか。
今回はJR奈良線の第2期高速化・複線化事業について見ていきました。
この事業の目的は輸送の安定化であり、列車の増発ではありません。
したがって複線化にともなう移動時間の短縮は期待されるものの、ダイヤが大幅に変動することはないと見込まれます。
京都~奈良間の主要な交通手段がより使いやすいものになることで、通勤・通学などで奈良から京都へ通う皆さんにとっての利便性が向上するとともに、奈良へと訪れる人々が増えることにも期待したいですね。
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