【賃貸物件の相続はどうしたらいい?】手続きにおける注意点など解説!
賃貸物件の相続はどのようにしたらいい?相続すべき場合と放棄すべき場合の見分け方、手続きにおける注意点などを解説!

アパートやマンションなどを賃貸経営していた親族が亡くなり、その物件を相続することになった場合には、どのような手続きや注意が必要となるのでしょうか。
そもそも、どのような物件でも相続した方がメリットは大きいのでしょうか。
この記事では、故人が賃貸経営していた物件の相続に関して、よくある質問とその回答を中心に解説します。

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賃貸専門家:古川 真史
資 格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
奈良在住25年以上。宅地建物取引士・賃貸経営管理士の資格保有。ルームアドバイザーとしてのキャリア18年以上の大ベテラン。不動産賃貸の関連はすべて媒介経験あり。奈良出身ではないのに奈良まほろばソムリエ検定(奈良通1級)取得する奈良への溺愛っぷり。奈良マニアの古川より独自な目線で賃貸情報を多数お届けします。
故人が賃貸経営していた物件は、必ず相続した方がいい?相続放棄した方がいいケースもある?

遺言書が存在する場合には基本的にその内容に従って相続が行われますが、そうではなく複数の相続人がいる場合には、どの財産を誰が相続するかを決める「遺産分割協議」を行うことになります。
「財産」には、預貯金や現金のみではなく、不動産も含まれます。
故人が賃貸経営していた物件を相続することは、一見すると相続人にとって良いことのように思えますが、相続することのデメリットが大きく、相続を放棄した方が良いケース(あるいは、相続した上で売却し、賃貸経営は引き継がない方が良いケース)もあります。
相続すべきか否かを検討するにあたっては、以下の事項を確認してみましょう。
1. 故人の財産全体で見たとき、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか?
相続することとした際には、故人のプラスの財産とマイナスの財産の両方を相続することとなり、どちらかのみを相続することはできません。
プラスの財産とは不動産や預貯金、有価証券など、マイナスの財産とは住宅ローンや借金などです。
アパートやマンションのローンが多く残っている場合などは、相続することでむしろ負荷がかかる可能性が高いため、売却も検討した方がいいでしょう。
2. 物件自体の収益性に問題はないか?
アパートやマンションを経営するにあたっては、賃料で収入が得られるだけではなく、固定資産税・ローン返済・管理会社への委託費用等、支出も発生します。
相続に踏み切る前に、収入と支出のバランスについても確認しておきましょう。
たとえば個人がアパートを所有しており、その入居率が低い(90%を下回る)場合、賃料収入よりも支出が上回り、かえってマイナスになってしまう場合があります。
また、築20年以上の物件を相続する場合には、すぐに大規模修繕(外壁の塗装や設備の交換等)が必要となる可能性が高く、そのための支出が多くなることが見込まれます。
3. 物件の相続にあたっての話し合いで、相続人の間で揉める可能性はないか?
物件の相続について、「公平に相続するために、共同所有すればいいのでは」と考える方もいるかもしれません。
しかし、不動産を共同で所有した場合、物件を売却したいときや改築したいときなど、共有者の間で合意形成を行うことが難しくなります。
また、固定資産税や管理費の負担割合で揉める可能性もあります。
物件を共同所有することは、なるべく避けた方がいいでしょう。
共同所有を避け、相続人のうちの一人が物件を所有することにした場合、考えられる相続の方法は「現物分割」と「代償分割」の二つです。
①現物分割
相続財産をそのままの形で分割する方法。不動産や株なども現金化せず、そのまま相続する
(例)故人の妻が預貯金を、(故人の子供2人のうち)姉が不動産を、弟が株を相続する
現金化の手続きを行わないため比較的楽な分割方法ですが、相続する金額(あるいは評価額)に差があった場合、不満を持つ相続人もいるでしょう。
上記の例で言えば、不動産の評価額が4000万円に対して株の評価額が1000万円だったという場合、株を相続する弟に不公平感が残る可能性は高いでしょう。
②代償分割
物件などの現物を相続した人が、他の相続人に代償金を支払う方法
(例)故人の子供2人のうち、姉が評価額4000万円の不動産を、弟が預貯金3000万円を相続した場合、公平な相続とするために姉が500万円の代償金を弟に支払う
前述した現物分割と比べて公平な相続ができることがこの方法のメリットですが、代償金は支払う相続人が用意しなければならないというデメリットもあります。
現物分割や代償分割を行うことが難しい場合には、相続した物件を現金化した上で相続人の間で分割する「換価分割」という相続方法もあります。
この方法は、相続人のうち誰も賃貸経営を引き継ぎたくない場合にも適しています。
相続人同士がなるべく折り合えて、納得できる方法を選びましょう。
4. 物件の入居者について、トラブルは発生していないか?
物件について確認が必要なことは、収支状況だけではありません。
家賃を滞納している入居者や、頻繁に騒音を立てている入居者など、トラブルを起こしている入居者がいないかも確認しておきましょう。
これらの入居者に対応することは、新たにオーナーとなる相続人にとって精神的・時間的負荷が高くなるでしょう。
騒音を起こしている入居者がいる場合等については、今後新しい入居者を集めることの妨げとなる可能性もあります。
入居者のトラブルに対応することが困難だと考えられる際には、物件を売却することも選択肢の一つとなるでしょう。
遺産分割協議と並行して行わないといけないことは、何かある?

賃貸用物件の相続に伴う手続きの中には、相続人が決定する前に進めるべき事項もあるため、よく確認しておきましょう。
1. 入居者に、家賃を振り込んでもらう口座の変更を通知する
金融機関は、名義人が亡くなったことを認識すると口座を凍結します。
もし家賃振り込み用の口座を変更しないままでいると口座は凍結され、借り手は家賃を払えず、相続人も家賃を受け取ることができなくなってしまいます。
物件を誰が相続するかが決まっていない段階でも、一旦遺族名義の口座を指定する等、振り込み先を変更しておきましょう。
管理会社を利用している場合には、振込先の口座が変わった旨を管理会社から入居者に通知してもらえることがあるので、併せて管理会社に相談してみましょう。
なお、相続発生から遺産分割が完了するまでの家賃収入は、相続人全員が法定相続分(※)で分けることとなっています。
(※)法定相続分:民法に定める相続人が2人以上いる場合の各人の相続割合のこと。
2. (物件のローンが残っている場合)金融機関に相談する
物件のローンの相続人を決定する際には、債権者である金融機関からも承諾を得る必要があります。
金融機関は、新しくローンを引き継ぐことになる人の返済能力を審査する必要があるためです。
ローンの相続人も遺産分割協議の中で決定していくことになりますが、故人が物件の契約時に連帯保証人として設定した人物が法定相続人のうちの誰かであれば、その人がローンと物件の両方を相続するのが一般的です。
ローンの引き続きは状況によって手続きが難航する可能性もあるため、ローンの相続についても協議しなければならないとわかった段階で、金融機関に状況を説明して相談を行っておくと安心でしょう。
なお、故人が生前団体信用生命保険(団信)に加入していた場合には、保険によって残債が免除されるので、相続人がローンの返済を行う必要はなくなります。
その場合も、保険料がおりるまでのローンについては支払いが必要となるため、いずれにせよ、まずは金融機関に相談しましょう。
3. 準確定申告を行う
「準確定申告」とは、故人の代わりに相続人が行う確定申告のことです。
所得税の課税対象となる「1月1日から亡くなるまでの間に得た収入」を確認し、手続きを行いましょう。
準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に手続きせねばならず、相続が発生してから10ヶ月以内の対応が求められる「相続税の納付」よりも締め切りが早いことに注意が必要です。
期限内に準確定申告を行わなかった場合、無申告加算税や延滞税を支払わなければならないため、速やかに手続きを進めましょう。
物件の相続人が決まった後は、何をすればいい?相続税についても対応が必要?

遺産分割協議を経て誰が物件を相続するか決まったら、以下の手続きに進みましょう。
1. 相続登記をする
まず必要となるのは、物件の名義を変更するための、相続登記です。
相続登記は自力で進めることも可能ですが、相続人全員の戸籍謄本を集める必要があったり、登記申請書を作らなくてはならなかったりと、時間と手間のかかる作業となります。
時間を作ることが難しい場合や、不備なく手続きを進められるか不安な場合には、司法書士や弁護士に依頼すると良いでしょう。
これらの専門家に支払う報酬の相場は、地域や相続人の人数によって大きく変わりますが、5万円~15万円程度です。
なお、2024年4月から相続登記が義務化されました。
相続登記を行わないままでいると、過料を支払わなければならなくなるため、注意が必要です。
2. 相続税を計算し、納付する
相続登記を終えたら、相続税の計算に移りましょう。
相続税は、相続が発生してから10ヶ月以内に現金で一括納付することとされています。
税額が大きい場合には物件を売却することなども検討する必要が生じるため、まずは早めに税額の計算を行いましょう。
しかし、物件を売却することでかえって相続税が上がってしまうこともあります。
相続税に関しては様々な控除や特例もあるため、物件を売却した方がいいかを検討する上では、司法書士に相談することもおすすめです。
まとめ~賃貸経営用の物件の相続手続きは、時にはプロの力も借りながら、スムーズに進めよう~

この記事では、賃貸用のアパート・マンション等を相続する際の手続きや注意点などを解説しました。
・故人が賃貸経営用に所有していた物件を相続することは、必ずしもメリットになるとは限らない。
収益性に問題ないかや、トラブルを起こしている住民がいないか等、事前の確認が必要
・相続人が決定する前に進めるべき事項があることにも注意。
ローンが残っている場合には金融機関に早めの相談を
・相続登記や、相続税の計算も早めに進める必要がある。
時間や知識の面で不安がある場合には、司法書士の助けを借りることもおすすめ
親族を亡くし、ただでさえ心労がある中で多数の手続きを行うことはどうしても負荷がかかります。
しかし、締め切りを過ぎたり手続きを怠ったりすると新たな出費につながる可能性もあるため、金融機関や物件の管理会社、司法書士などの専門家にも相談しながら、ポイントを押さえて進めていきましょう。
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