「オーナー様・管理会社向け」安否確認のための開錠 リスクは?注意点は?
入居者の安否確認のためにお部屋の鍵の開錠を依頼される――こうした事態が起こった場合、物件を管理する側としてはどのように動くのが適切なのでしょうか。
入居者に無断で開錠を行うことになった際、どんなことに気をつけるべきか、詳しく解説していきます。
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担当者:木原一憲
趣味は休日バイクでツーリングすること!不動産キャリア20年以上の経験と奈良生まれ奈良育ちの知識を活かし奈良の情報を語ります!
安否確認を依頼されて入居者に無断で開錠 これって大丈夫?
賃貸物件のオーナーさんや管理会社がたびたび遭遇するのが、入居者の安否確認を求められる事態。
入居者さんのご家族や勤務先の方が入居者さんといきなり音信不通になり、「無事かどうかを確認してほしい」と依頼をしてこられるケースです。
こうした場合の多くは、確認を依頼されたお部屋へ行ってインターホンを鳴らしたり玄関ドアを叩いたりしてみても反応が返ってくることはなく、お部屋の鍵を「入居者には無断で」開錠して安否を確認することになります。
いざ鍵を開けてお部屋の中へ入ってみると、実際に入居者さんの生命に関わる事態になっていたという場合は少なくないものの、そうではなく入居者さん自身はいたって普通に過ごされていたという場合もあります。
もちろん入居者さんの無事は喜ばしいことなのですが、場合によっては無断で開錠して侵入したことを咎められ、話がこじれてしまうことも……。
そもそも物件のオーナーさんや管理会社が安否確認の要請に応えなくてはいけない義務はあるのでしょうか。
また、話がこじれた結果、管理者側が入居者さんから訴えられ損害賠償の責任を負ってしまう恐れはあるのでしょうか。
安否確認のための開錠義務はなし! でも……
物件を管理する側が、居者の安否確認をするために開錠しなくてはならない義務。
結論から言うと、こうした義務はありません。
これは、例え警察を通した依頼であったとしても同じことです。
刑事訴訟法という法律で定められている「強制捜査」にあたる事態であれば話は別ですが、入居者さんの安否確認は強制捜査にはあたりません。
あくまで「お願い」なので、断ることは可能なのです。
とはいえ、入居者さんの安否確認を依頼されるような状況となれば、何かしらの事件や入居者さんの生命の危険など、それなりの事態が起こっている可能性は高いでしょう。
義務ではないからと開錠を断った結果、取返しのつかないことになってしまうかもしれません。
これは入居者側としても管理者側としても、大変な損害につながるリスクのあることです。
開錠を断るよほどの理由がない限りは、管理者側としてはできる限り要請に応えたほうが良いと言えるでしょう。
無断開錠による損害賠償の可能性はある?
しかし、できるだけ安否確認には協力するのが良いと言われても、入居者さんから訴えられてしまう可能性を考えると、つい及び腰になってしまうものです。
物件の入居者、つまり借主には賃貸物件を占有する権利があります。
たとえ物件の持ち主であっても、借主の許可なしにお部屋の開錠をすることは原則として認められない行為なのです。
では、安否確認のために無断で開錠する行為はどう解釈すればよいのでしょうか。
社会的に認められない行為だと判断されてしまう恐れはないのでしょうか。
これも結論から言えば、ケースバイケースではあります。
ただし、多くの場合は「社会的相当性」を有した行為と見なされるため、損害賠償へと発展する確率は少ないでしょう。
社会的相当性というのは、世間の一般常識と照らし合わせて「ふさわしい」「やむを得ない」と捉えられることを指します。
つまり、
“入居者さんがしばらく音信不通となっており、生命が脅かされるような事態になっている可能性もある。そんななかで入居者さんの命を守るために無断でお部屋の開錠をして安否確認をする。これは借主の権利を考えると原則してはいけないことだけれど、社会の一般常識や倫理的な面を考えると「仕方ない」こと。”
平たく言えば、そう捉えられるだろうということです。
この「仕方ない」を逸脱した行為があった場合に、違法性が問われるのです。
仮に、安否確認を行った結果入居者さんから訴えられたとして、入居者さんがこうむったと主張する損害の賠償責任を負わなくてはならない可能性は低いと考えられます。
また、こうした安否確認の多くは警察の要請という形で、警察官の立ち合いのもと行われることでしょう。
きちんと正当性のある流れのもと行われたのであれば、入居者さんが不満を抱くことは少ないと思われます。
もし入居者さんの周囲の方から直接安否確認の依頼があっても、一旦警察への連絡をして、そこを通す形にしましょう。
入居者さんとのトラブル回避という点でも必要なことですし、万が一何かしらの悪意をもっての開錠依頼であった場合に、そこに加担し入居者さんを危険にさらす事態を避けることにもつながります。
まとめ~入居者の安全を迅速に守るために~
いかがでしたでしょうか。
今回は入居者さんの安否確認について、物件の管理者側からの視点で見てきました。
お部屋の無断開錠および入室が必要になるのは、安否確認の依頼があった時だけではありません。
水漏れや火災の発生時など、様々なケースが考えられます。
一刻を争う事態の際に迅速に動けるよう、入居者さんと交わす賃貸借契約書の内容に、いざという時の立ち入り点検ができる特約事項を盛り込んでおくのもひとつの方法です。
非常時に動くリスクを軽減するため、ひいては入居者さんの安全をスムーズに守るため、できる手立てを打っておくのは貸主として大切なことではないでしょうか。
借主としては、そういった非常時の対応に関する事項がどのようになっているか、契約の際にしっかりと確認し頭に入れておくことが大事です。
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