賃貸契約におけるIT重説って?自宅でも重要事項の説明を受けられるメリット・デメリット
お部屋を借りる際や不動産を購入する際に一般的に宅地建物取引士と対面で行う重要事項説明ですが、インターネット上でビデオ通話を用いて重要事項説明を行うIT重説では店舗に訪れることが難しい方でも自宅で重要事項説明を受けることができます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、お部屋を借りる場合や不動産を購入する際に必要な重要事項の説明がビデオ通話やアプリを使用して遠隔で行える形が普及しました。
今回はIT重説の定義やメリット、デメリットについてご紹介します。
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担当者:木寅昌紀
生粋の奈良県民の私が宅地建物取引士や賃貸経営管理士の目線で奈良の賃貸情報や暮らしの事、エリア情報まで幅広く発信します!
賃貸契約におけるIT重説とは?
賃貸契約おけるIT重説とは、賃貸契約を結ぶ際に必要な重要事項説明をビデオ通話などのインターネットツールやアプリを利用して行うことを指します。
重要事項とは不動産の賃貸契約や売買契約をする前に契約内容に問題がないか不動産会社による説明のうえ確認をすることをいいます。
これは宅地建物取引法で定められているため、必ず宅地建物取引士という資格を持った者が説明を行わなければいけません。
さらに説明の際には重要事項を記載した重要事項説明書も顧客へ交付しなければいけません。
今までは宅地建物取引士が対面で重要事項を説明していましたが、パソコンやカメラなどの端末を利用して対面と同様に説明や質疑応答が行える環境であれば自宅でも重要事項を受けられるようになりました。
IT重説明を行えるのは賃貸借契約に関する取引だけで、対面の場合と同様に宅地建物取引士が賃借人に対して重要事項説明書を事前に交付しておくことが必要になります。
IT重説のメリットとは?
IT重説は不動産会社や顧客にとっていくつかの利点があります。
時間や費用を削減できる
まずはじめに不動産会社はIT重説という新しいシステムに移行することで、業務プロセスを改善し、さらに収益を上げることができます。
顧客側がより効率よく手軽に不動産を契約することを可能にするため、契約数のアップにも繋がります。
顧客側は遠方に住んでいる場合、なるべく短期間で重要事項説明を含む不動産契約を済ませたいと希望される方は多いです。
そのような方でも重要事項説明を受けることができればスケジュールに余裕が生まれ、引越し準備などの別の作業に時間を費やせます。
自宅で重要事項の説明を受けられる
テレビ電話を利用することで、顧客は自宅で重要事項の説明を受けることができます。
宅地建物取引士と実際に対面すると、緊張してしまい説明内容について質問ができず、疑問を残したまま契約をしてしまう方がいらっしゃるかもしれません。
IT重説であれば自分のお住まいでリラックスした状態で話を聞くことができるため、落ち着いて対話をすることができます。
また、家事などで忙しく来店が難しい、怪我をしてしまったため外出が難しいといった顧客でも手間をかけずに重要事項説明を受けることができます。
顧客のプライバシーが守られる
さらにIT重説はプライバシーを保護するメリットもあります。
顧客が自宅で説明を聞くことができるため、より強力なセキュリティ環境で賃貸契約を締結することができます。
録画や録音ができる端末でやり取りをすることで、顧客の公平性も守られるのです。
IT重説のデメリットとは?
しかし、IT重説には多くのデメリットもあります。
IT重説を行う環境を整える必要がある
IT重説は大きな費用がかかることがあります。
新しいシステムを導入するにはモニターやWEBカメラなど多くのコストがかかります。
機材を購入した後も、スムーズにオンライン通話を行うため有料のツールを導入しなければならない場合があります。
研修やマニュアル作成などの準備が必要
不動産会社がオンラインで重要事項を説明する、あるいは聞く場合、対面の場合と比べると相手の表情や声色など、相手の様子を感じ取ることが難しくなります。
トラブルのないIT重説を終えるためには事前の研修やマニュアルの作成などが欠かせなくなります。
通信環境に左右されやすい
不動産会社か顧客、どちらかの通信状態が悪いと映像や音声が乱れ、うまく重要事項説明が進まないことがあります。
あまりに通信状態が悪い場合は別の日に延期となり、契約までに時間がかかってしまうこともあります。
顧客側の通信環境が悪い場合は会社側で対策をすることができないため、改善ができずに結局対面での説明が行われる場合もあります。
IT重説の流れは?
IT重説の流れは以下のとおりです。
1.不動産会社が説明して同意を得る
まず始めに不動産会社がIT重説を行うことについて顧客に説明し、同意を得なければいけません。
そして顧客側がIT重説を行える環境が整っているかも確認しておく必要があります。
さらにプライバシーポリシーの同意、重要事項説明を録画や録音をする場合はその許可も必要になります。
顧客から同意を得た後はIT重説を行う日程を決めます。
2.重要事項説明書、資料が送付される
顧客が説明を聞きながら資料を確認できるように、不動産会社から重要事項説明書とその他に必要な資料が顧客へ送付されます。
3.IT重説が開始される
重要事項説明を行う前に、不動産会社は画面に宅地建物取引証を写し、顧客が証明書の顔写真と取引士の顔が同じであること、取引士の指名、取引士の登録番号などを確認してもらいます。
重要事項の説明中、内容について気になることがあれば質問をして確認するようにしましょう。
4.重要事項説明書に署名、押印をする
重要事項説明が終わった後は事前に送付された重要事項説明書のうち1部に署名、捺印をして不動産会社に返送します。
返送された重要事項説明書を受け取った不動産会社は署名と捺印を確認します。
IT重説の際のデータや個人情報などとあわせて厳重に管理されます。
IT重説をする前に気を付けるべきこととは?
トラブルなくIT重説を終えるためにはいくつかの準備が必要になります。
当日までにアプリやツール、インターネットの通信状態を確認しておく
不動産会社に指定されたツールやアプリが当日でも問題なく使用できるよう、事前にダウンロードをしてエラーが表示されないか、音声や映像は問題なく出力されるかを確認しておきましょう。
重要事項説明書などの書類に目を通す
送付された重要事項説明書などの書類一式には事前に目を通しておきましょう。
普段目にすることが少ない法律用語や専門用語が含まれるため、時間をかけてゆっくり読み、わからない点は説明時に質問するようにしましょう。
また、契約書や重要事項説明書などの書類が手元になければ重要事項説明を実施できないため、当日は必ず手元に用意しておきましょう。
なるべくIT重説がある日に別の予定を入れない
重要事項説明にかかる時間は大体で1時間程度になります。
しかし、その物件の特性や契約内容によってもちろんかかる時間も異なります。
契約内容に齟齬がないか最終確認をするためにも、なるべくIT重説の前後には予定を入れず、時間にゆとりをもって受けられるようにしましょう。
【IT重説(ITを活用した重要事項説明)とは?】まとめ
なるべく人との対面を避けたい人、賃貸契約をなるべく短期間で住ませたい人、重要事項説明を落ち着ける環境で聞きたいと考えている人にとってはIT重説は非常に便利でしょう。
現在は重要事項説明だけですが、将来はお部屋の内覧から契約までの流れをすべてインターネット上で完結できるようになるかもしれません。
今後も賃貸契約のIT化は進み、店舗に足を運びづらい方やスケジュールの調整が難しい人でもさらにお部屋探しが簡単になる日が訪れるでしょう。
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