【奈良のこんなところに!】日本最古のため池・蛙股池を知ろう
Web担当者:出口晏奈
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【こんなところに日本最古!】蛙股池を知ろう
奈良市西部・菖蒲池エリアにある「蛙股池(かえるまたいけ)」は、日本最古のため池、または日本最古のダムとして知られたスポットです。
この蛙股池はどのような歴史をもちどのように人々と関わってきたのでしょうか。
『日本書紀』に記された歴史も紐解き、解説していきます。
蛙股池ってどんなところ?
蛙股池は奈良県奈良市の西部、近鉄菖蒲池駅の南側徒歩7分のところにある灌漑(かんがい)用のため池です。
地図で見ると「く」の字を逆さまにしたような独特の形をしており、それが社寺の梁に用いられる「蛙股」という部材の形状と似ていることからその名がつけられたと言われています。
ただしその名がつけられたのは比較的近年、20世紀に入ってからではないかとみられており、江戸時代の文献には「大池」という名で記されています。
その当時の名があらわす通り、奈良市のなかでも数えるほどのたいへん大きな池で、東西・南北ともにその長さは約500メートル、面積は8.6ヘクタールにもおよびます。
池に沿って豊かな緑をたたえ、そばには小学校や神社、美術館などが建てられています。
周辺地域は住宅地になっています。
降水量の少ない奈良盆地で人々が生活をしてゆくのに、ため池は古くから欠かせない存在でした。
現在も農業用水として、また洪水からの防御用として住民の生活を支えている蛙股池ですが、その歴史は1400年以上も前、飛鳥時代にまでさかのぼると言われています。
蛙股池と人々とのかかわり
そう。
蛙股池は現存するなかで日本最古のため池――さらに言えば、「日本最古のダム」として知られているのです。
『日本書紀』に記された蛙股池!
蛙股池が現存する日本最古のため池と言われている謂われは、日本国最初の正史『日本書紀』にあります。
日本書紀』巻第二十二・推古天皇15年(607年)の条に「是の歳の冬に、倭国に高市池・藤原池・肩岡池・菅原池を作る」『といった記述があり、聖徳太子の進言により大和の国に4つのため池がつくられたことが記されているのですが、その4つのため池のうちのひとつ「菅原池」というのが、現在で言うところの蛙股池であると考えられているのです。
実際に菅原という地名は蛙股池のほど近く、池の南東から流れ出る大池川近郊に現存しています。
日本最古の天満宮といわれる菅原天満宮のあるところです。
ちなみに西暦607年というと、かの有名な、現存する世界最古の木造建築物群・法隆寺が創建されたと伝えられる年でもあります。
たいへんな歴史の重みを感じますね。
蛙股池と人々とのかかわり
蛙股池はつくられてから現在に至るまで、長い長い歴史を歩んできました。
それは、人と歩んできた歴史でもあります。
近隣の農業を支え、水害から守り、多くの人々に活用されてきた蛙股池は、太平洋戦争の末期には三重海軍の予科練生によってカッターボート(人員・物資の輸送や救命などに用いられた大型の手こぎボート)の訓練場として使われたこともありました。
そのときに機銃掃射を受けて沈んだカッターボートがいくつもあり、今もなお水位が下がると池の底から姿をあらわすことがあるそうです。
高度経済成長期の1960年代ごろから周辺地域の宅地開発が進むと、それに伴って生活排水が多く流れ込むようになり、池の水質が悪化しはじめました。
しかし1980年代に入り、近隣の住民たちによる環境改善へ向けた活動がさかんに行われるようになりました。
蛙股池を守ろうという人々の想いに応えるように下水道の整備もすすみ、水質は改善してゆきました。
2000年からは、大和川流域総合治水対策の一環として奈良市が行う特定保水池整備事業によって保水機能を高める工事が行われ、2003年に完了しました。
洪水調整池としての機能が強化されたことにより、より多くの人々を水害から守ることができるようになりました。
「日本最古のダム」説!?
そんな蛙股池ですが、社団法人日本大ダム会議発行の『日本ダム台帳』という文献に掲載されており、そのことから「蛙股池は日本最古のダムである!」とも言われています。
ダムと言えば、多くの人にとってはコンクリートで固められた近代的な構造がまず思い浮かびますので「???」と思われるかもしれませんが、広辞苑によると「発電・利水・治水・保全などの目的で河海の水をためるために河川・渓谷などを横切って築いた工作物とその付帯構造物の総称」がダムであると定義づけられており、蛙股池が治水という役割も担っていることや丘陵地の谷あいの地形をせき止めた構造から考えれば、たしかにダムと捉えることもできるでしょう。
奈良市の資料によると蛙股池の堤高(ダムの高さ)は16メートルとされており、国が河川法によって定めた「ダム」の基準である堤高15メートル以上にも当てはまります。
ただし、これには異論もあります。
奈良県のため池台帳のデータにもとづくと、蛙股池の堤高は14メートルとされており、これでは国の定める「ダム」の基準には満たないことになるのです。
このデータの食い違い、本当のところはどうなのか気になるところではありますが、蛙股池は堤防本体の基礎地盤の真上に道路や住宅があり正確な堤高を測ることがむずかしく、こういった事情が意見の分かれる原因となっています。
とはいえ、「ダム」か否かの議論の真相がどうであったとしても、蛙股池が古くからそこに住まう人々にとってかけがえのない存在であることには変わりありません。
静かな水面、豊かな緑、そこに住まう鳥たちなど、たくさんの生き物たち――。
長くのあいだ人を守り人に守られてきた蛙股池は、こんにちも人々の憩いの場として美しい景観をたたえています。
池が築造された際に池守護のためにつくられたと言われる菖蒲池神社が、そんな蛙股池を象徴するかのように、いまも池の中心部には建っています。
まとめ~蛙股池周辺に住むなら~
いかがでしたでしょうか。
今回は現存する日本最古のため池であり、日本最古のダムとも言われるスポット・蛙股池について見ていきました。
このため池が持つ、『日本書紀』に記されているほどの長い歴史ももちろん大きな魅力ではありますが、近隣住民の方々の想いと努力によって守り受け継がれてきた静かで美しい環境は、きっと貴方の心にも深く響くものがあるのではないでしょうか。
池のほとりの遠景には若草山を臨み、春には桜も見ものです。
菖蒲池駅を挟んだ北側には駅名のもととなった菖蒲池があり、こちらの景観も素晴らしいものがあります。
駅周辺の住宅地は奈良のなかでもとくに落ち着いた雰囲気で、生活に根差した商店街があり、電車に10分も乗ればすぐ奈良市の中心街へ向かうこともできます。
もちろん周辺に賃貸住宅もありますので、このエリア周辺でのお部屋探しなら「賃貸のマサキ」にどうぞお任せください。
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