近年注目のサービス・「ホームステージング」とは 物件内覧者にとってのメリットも分析
「内覧してみたけれど、実際に住んでみた時の想像ができなくて迷ってしまう」「お部屋の内見をして気に入って契約したけれど、いざ引っ越して家具を置いてみたら、イメージと違った」そのような経験はありませんか。
そんな悩みに応えるため、近年導入されつつあるのが、「ホームステージング」というサービスです。
不動産賃貸・売買に出されている物件に、インテリア家具などを置いて内見者を迎えるので、実際に生活した場合のイメージがしやすくなります。
今回は、そんな「ホームステージング」について、物件の内見を検討している方向けに紹介していきます。
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担当者:木寅昌紀
生粋の奈良県民の私が宅地建物取引士や賃貸経営管理士の目線で奈良の賃貸情報や暮らしの事、エリア情報まで幅広く発信します!
「ホームステージング」って何?
「ホームステージング」とは、入居者を募集している物件の室内を、家具・照明・植物などでコーディネートすることです。
アメリカ発祥のサービスで、欧米では中古物件を売却する際に一般的に用いられています。
「モデルルームみたいな感じ?」その通りです。
モデルルームとの違いは、モデルルームになるのは新築物件であるのにたいし、「ホームステージング」が多くは中古物件対象のサービスだということ。
近年、日本では中古住宅市場が活発になっており、中古物件を早く成約につなげるために、「ホームステージング」が注目されてきているのです。
中には住人の退去前に、住んでいる状態のインテリアを生かしながら、内覧用の演出を工夫する「居住中ホームステージング」もあります。
新築物件に「ホームステージング」を行う場合には、デザイン家具が設置されている「モデルルーム」状態の部屋に、寝具や調理器具、生活雑貨などをさらにコーディネートして、内見する方に生活のイメージを湧かせるように働きかけます。
「ホームステージング」には、オーナーが自分で行ったもの、管理会社などの仲介でホームステージングの会社や、「ホームステージャー」という有資格者により行われたもの、そして仮想空間上で行う「VRホームステージング」があります。
日本の「ホームステージング」で一般的なのは、使用する家具をレンタルする方式です。
このレンタル家具は、内覧で気に入った場合、契約者が買い取れる場合もあります。
一般社団法人日本ホームステージング協会では、協会会員(賃貸オーナー、不動産業者、ホームステージング提供業者など)対象のアンケート調査と分析をまとめた「ホームステージング白書」を定期的に発表しています。
今回は、その最新版「ホームステージング白書2022」を見てみましょう。
「ホームステージング」の実施地域
北海道から沖縄まで、各都道府県で実施されていますが、全実施の中で1%に満たない県が多く、まだまだ一般の人が触れる機会は少ないと言えます。
その中で、2%以上の都府県は、宮城(2.3%)、茨城(3.0%)、埼玉(8.8%)、千葉(8.8%)、東京(17.7%)、神奈川(12.3%)、愛知(3.9%)、滋賀(2.3%)、京都(4.6%)、大阪(6.8%)、兵庫(3.9%)、福岡(2.5%)、長崎(3.2%)の13都府県で、やはりその地方の大都市を含むところが中心となっています。
奈良県の実施は全体の1.8%で、この先増えてくる可能性も高そうです。
どのような物件・場所を「ホームステージング」しているのか?
「ホームステージング」の対象となるのは、売却目的の中古物件が全体の43.6%、賃貸が17.3%です。
では、どういった物件で実施されるのでしょうか。
賃貸の場合、「入居しにくい部屋」が45%、「長期空室の部屋」が26%、「全部の部屋」が18%の、計89%です。
実施する場所としては、リビングダイニングとキッチンが特に重要とされていました。
「ホームステージング」のメリット
さて、「ホームステージング」は、どのような方法であっても、オーナーや不動産業者がそれなりのコストを負担するものです。
「そこまで、どうしてやるの?」と疑問に思われるかもしれません。
ここでは、引き続き「ホームステージング白書2022」のアンケート結果で、売買・賃貸共に高い割合で効果が認められた点を紹介します。
はじめに、売買・賃貸の場合それぞれの「大幅に増えた(長く/短くなった)・少し増えた(長く/短くなった)」の合計割合を示し、売り手・貸し手側にとっての「ホームステージング」のねらいを分析していきます。
そして、内見する側にとってのメリットも考えていきましょう。
①物件の閲覧数・問い合わせ数が増える(閲覧数 賃貸:72%)(問い合わせ数 賃貸:76%)
近年は、インターネット検索で物件情報を調べることがほとんどで、詳細情報として室内の画像を時にはパノラマで見ることも可能です。
多くの画像がまっさらな室内を写したものですが、差異化が難しいだけでなく、どうしても空間の奥行などがわかりにくいものです。
その中で、画像の部屋に家具が配置されていると、サイズ感だけでなく、生活した場合の動線なども想像しやすくなります。
「物件一覧」の時に表示されるトップ画像がホームステージングされた部屋であると、デザイン性からも目を引きやすく、物件詳細に進ませる効果があります。
物件を探す側からすると、探す段階で好みの間取りや広さ、内装がある場合が多いでしょうから、一つの物件がホームステージングされていると、似たような他の物件についても、具体的な想像やしやすくなりそうです。
そして、ホームステージングされた物件を軸に、自分の理想の住まいを考えるようになっていくのではないでしょうか。
②内覧者が増え、内覧時間も長くなる(内覧者 賃貸:69%)(内覧時間 賃貸:66%)
不動産契約を検討している人は、複数の物件の内覧をすることがほとんどです。
その複数の候補の中から「この物件!」と決めてもらうためにも、差異化が重要になります。
通常の場合、問い合わせて内覧を予約しても、先に内覧した物件が気に入ってしまえば、そちらで成約、他の内覧予約はキャンセルとなるでしょう。
しかし、内覧予約にホームステージングされた物件があるとしたら、「ここは見ておこう」とストックされ、キャンセルされずに実際に内覧されそうです。
そして、内覧する時には、まっさらな空間を見るだけでなく、実際にインテリアに触って、動かしたりしてみて、実際の生活をイメージすることが可能になります。
具体的なイメージが苦手で、内覧を早く終わらせがちな人でも、自然にいろいろなポイントを確認することになりますね。
売り手側・貸し手側にとっても、内覧する側にとっても、メリットが大きい効果と言えます。
③成約までの期間が短くなる(成約までの期間 賃貸:79%)
「ホームステージング」の場合、実際の入居者をイメージしてインテリアをコーディネートしています。
物件の特徴によって、一人暮らし向けか家族向けか、ペットがいるのか、そのほか様々に、「ぴったりの入居者」がいることでしょう。
「売りたい/貸したい人(家族)」に合ったインテリアの部屋を内覧できることによって、実際の成約→入居に結びつきやすくなるのでしょう。
こちらも、売り手側・貸し手側、内覧する側両方にとってのメリットですね。
【近年注目のホームステージングとは?】まとめ
ここまで、「ホームステージング」という手法の内容とメリットを説明してきました。
現在ではまだ導入初期段階ですが、今後、ホームステージングされた物件と出会うことが多くなっていきそうですね。
「不動産物件は早い者勝ち」といいますが、物件を選ぶ側にも、譲れない条件や理想のお部屋作りなどを具体化して情報収集をし、内見に行くことがますます求められるようになっていくのかもしれません。
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