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担当者:古川真史
【奈良に住んで20年】奈良を誰よりも愛し続ける奈良ヲタク。人気グルメから人口や歴史、鹿の生息数。何でも答えます。最近は大仏プリン推し。
ならまちに残る町家を解説
ならまちとは、もともと元興寺の境内であったところに民家が建てられ、庶民の住みかとなったエリアです。
古い町並みが今も残るノスタルジックなエリアであるならまちは、近年特に観光客に人気のスポットとなっています。
また、今も残る町家をリノベーションして住宅、カフェ、雑貨店、ギャラリーとしても活用されているため、お買い物や食事などにも楽しめるエリアともいえます。
ならまちに残されている古い町家は、古くは江戸時代に建てられたものから大正時代、昭和に建てられたものが共存している状態です。
今回は、ならまちにある町家の特徴や代表的な町家のいくつかを紹介、見学できる町家などを紹介します。
町家を知ってみると、当時の人々の暮らしぶりが目に浮かぶようになり、ならまちの風景が違って見えるかもしれませんよ♪
ならまちの町家の特徴
今も残る、ならまちの町家の特徴を紹介します。
間口が狭く、奥行きが深い
町家の大きな特徴として、“間口が狭く奥行きが深い”ことがあげられます。
かつて税金は「間口が広くなればなるほど高くなる」仕組みになっていました。
一方で、表通りに面した作りにしたいと言う思いから税金対策として間口を狭くし、住めるスペースを確保するために奥行きをたくさん取る建て方になったとのことです。
格子が太い
格子とは、日差しや風量の調節をするためや、外から中を見えにくくするために設けられたものです。
一般的に格子と言って思い出されるのは京都などで見かける細格子かもしれませんね。
京町家格子は1本1本が細く繊細な作りになっていますが、ならまちの格子は別名法蓮格子といい、杉の丸太を縦に半分にしたものを窓の格子として打ち付けてあるものとなります。
半円形の格子や四角い格子も見られますが、このような太い格子が作られた背景が奈良ならではの理由です。
それは・・・鹿対策のためです。
ならまちの周辺は今も昔も鹿がウロウロすることが少なくないとのこと(※新型コロナウィルスの影響で観光客が減ったことから鹿たちも奈良公園からならまちまで南下してエサを探すことも増えたとか)。
中には鹿が角で窓に突進してくることもあるとのこと。
鹿に突進されても壊れないように太い格子を採用しているとのことです。
箱階段
箱階段とは階段の下に作られている引き出しがあるものをいいます。
階段の下にできるスペースを有効活用するための昔の人の知恵ですね。
箱階段は作りはしっかりしていますが、現代人が階段を登ろうとすると少し怖いです。
手すりがないからかもしれませんね。
つし2階
高さを低く抑えた2階部分のことです。
ならまちの町家をよく見てみると、2階部分がない家とつし2階がある家が見られます。
ならまちの中には、お伊勢参りのための街道があった場所があります。
江戸時代にはその通りを大名行列も通っていました。
その当時から残っている家には2階がないのですが、その理由としては大名行列を2階から見下ろしてはいけないためです。
明治になって大名行列がなくなってからは、納戸程度の利用目的であれば低い2階部分を作っても良いとされたため、つし2階のような2階部分が作られた家が増え始めました。
のちに紹介する藤岡家住宅が好例です。
虫籠窓
虫かごの窓と言う漢字が当てられているように、虫かごの檻のような窓を言います。
つし2階に光と風を取り入れるために設置されています。
デザインは時代によってさまざまです。
身代わり申
ならまちならではとも言えますが、町家の軒先に身代わり申と言う赤いサルの飾り物が複数吊るされているのを見かけないでしょうか。
この身代わり申は“庚申さん”と言うならまちならではの信仰から来ており、災いを代わりに受けてくれると言われています。
【奈良町で見かける赤い人形とは?】身代わり申を吊るす理由≫
町家の間取りの特徴
主屋と離れ
ならまちの町家の特徴は、間口すぐそばに主屋があり、中は手前より「みせの間」「中の間」「奥の間」といった間取りになっています。
それらをつなぐように廊下があり、突き当たると離れに行くための渡り廊下が見えます。
渡り廊下の前には中庭が見られます。
渡り廊下
主屋と離れをつなぐ廊下のことです。
中庭に面して建てられ、便所が設けられています。
中庭
渡り廊下から見える庭です。
ならまちに残る町家の紹介
木奥家住宅主屋(登録有形文化財)
芝新屋町にある、ならまちの町家の中でも大型で、寛政4年に建てられたため、表屋造としてはならまちに現存する町家の中でもっとも古いと言われています。
表屋造(おもてやづくり)とは町屋の形式のひとつで、表通りに面して店を構え、その奥に居住用の建物を別の棟として建てたものです。
伝統的な町家の姿をとどめているため、ぜひチェックしていただきたい町家で、雰囲気だけでも味わっていただけるとうれしいです。
藤岡家住宅(重要文化財)
ならまちの中心、元興寺町にある町家です。
江戸時代中期に建てられた、商家の特徴ともいえる突き上げ戸や商品を並べることができる揚げ見世(ばったり床几)・蔀などが残されており、伝統的な商家として貴重とされています。
揚げ見世とは、商品を置く台であり、開店の際は揚げ見世を開放して商売をし、閉店の際には閉じると言う使われ方をしていました。
田村青芳園茶舗店舗兼主屋(登録有形文化財)
勝南院町にあり、現在はお茶の販売店となっています。
建てられたのは江戸時代とされますが、当時の町家にしては珍しい総2階建です。
もともとは宿屋だったためかもしれません。
正木家住宅主屋(登録有形文化財)
江戸時代後期に建築された毘沙門町にある町家で、現在は奈良女子大学セミナーハウスとして使用されています。
かつては乾物屋やカメラ店、診療所を営んでいたことがあるとみられます。
奈良町界隈にある「正木家住宅」が有形文化財へ登録されました≫
松山家住宅主屋南棟・主屋北棟ほか(登録有形文化財)
奈良市西新屋町にある町家で、主屋南棟・北棟は江戸後期に建てられたとみられますが渡り廊下・麦蔵・米蔵は昭和前期に建てられたとされています。
主屋南棟と米蔵は現在飲食店として利用されており、北棟は1988年のならシルクロード博よりオリエント館として親しまれています。
吉田家住宅主屋・吉田蚊帳店舗(登録有形文化財)
奈良市芝新屋町にある、カラフルな蚊帳織りふきんで有名な吉田蚊帳です。
大正10年から蚊帳の製造販売を営んでいた吉田家が昭和7年に主屋を建築しました。
ならまちにある町家の中ではどちらかと言うと新しめの昭和前期の町家を表しており価値が高いとされています。
店舗は漆喰大壁造の土蔵風外観で、商品を見る傍ら、中の様子をうかがうことができます。
中川家住宅主屋ほか(登録有形文化財)
中川家は18世紀後半から東向中町で織物業を営んでいました。
大正3年に大阪電気軌道奈良駅(今の近鉄奈良駅)を建設するにあたり、現在地となる今辻小町に移転しました。
織物業は戦前まで営んでいたとのことです。
全体的に端正なつくりで、ならまちにおける近代の町家の特徴をあらわしています。
また、工場と住宅を区画していた煉瓦塀は伝統的な町家と微妙にマッチしています。
岡田家住宅主屋(登録有形文化財)
鵲町にある、明治前期に助産婦の住居として建築された町家です。
昭和の前期にみせの間の北部分が洋間に改造されており、伝統的な町家でありつつも洋間建築が残されていることで、当時いかに洋風建築が普及したかがわかる町家となっています。
細川家住宅・森家住宅(登録有形文化財)
細川家住宅は南城戸町にある、19世紀初頭に建築された町家で、和ろうそくを製造・販売していました。
隣には森家住宅として細川家の隠居所として建てられた町家もあります。
こちらは明治20年代頃の建築とみられています。
森家住宅については予約制で内部見学が可能です。
<連絡先>
電話・Fax:0742-48-4682
メールアドレス:gmi067@yahoo.co.jp
気軽に見学に行ける町屋があります
上手で紹介した住宅は基本、外観のみを見ることができる程度、または予約が必要ですが、予約なし・無料で建物の中まで見せていただける施設もあります。
ならまちにぎわいの家
大正6年に建築された町家を改修し、平成27年に当時の暮らしや文化を体感できるセットしてオープンされました。
定期的に茶会や絵手紙の会などのイベントを行い、観光客や地域住民が楽しめる場として活用されています。
・開館時間 9:00~17:00
・原則毎週水曜日定休
ならまち格子の家
こちらは残されている建物ではなく、当時の町家を再現し新築したものです。
ならまちの典型的な町家を再現しており、中もじっくり見学ができます。
またならまち散策の休憩所として多くの方に利用されています。
ほかにもならまちには町家をリノベーションしたカフェやお食事処、和菓子店などがあるので、お買い物やお食事、カフェタイムにいかがでしょうか。
奈良漬の販売をはじめ食事・喫茶に利用できるあしびの郷や和菓子店中西与三郎、ランチなどが楽しめるはり新、カナカナ、Cafe maruなどがあります。
【ならまちに残る町家の特徴とは?】まとめ
以上、ならまちの町家について紹介させていただきました。
ならまちを散策していると古い町家がたくさんあり、歴史的な街並みを楽しむことができますが、町家の知識を少し頭に入れてから散策すると、町の歴史をさらに楽しむことができますよ。
ランチやお茶タイムに訪れるもよし、無料で見学できる施設もありますので、ぜひ皆さんも訪れてみてください。
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担当者:古川真史
【奈良に住んで20年】奈良を誰よりも愛し続ける奈良ヲタク。人気グルメから人口や歴史、鹿の生息数。何でも答えます。最近は大仏プリン推し。