入居者による無断転貸は、絶対に許してはならない!
不動産投資や不動産賃貸は、不動産を所有するだけで家賃収入が得られることで安定した収入減として注目されています。
しかし、不動産を所有しただけで何もしなければ予期せぬトラブルに見舞われることもあります。
今回はそんなトラブルのひとつである『無断転貸』について解説します。
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担当者:木寅昌紀
生粋の奈良県民の私が宅地建物取引士や賃貸経営管理士の目線で奈良の賃貸情報や暮らしの事、エリア情報まで幅広く発信します!
『無断転貸』って何?
転貸とは、誰かから借りたもの(この場合は不動産に限らず)を更に別の誰か(第三者)へと貸してしまうことをいいます。
転貸=又貸しと表現すれば分かりやすいでしょう。
この転貸行為そのものは違法性があるものではありません。
しかし、貸主に無断で転貸行為を行うことを『無断転貸』といい、場合によっては違法行為となる場合があります。
無断転貸は不動産業界だけで使われる用語ではありませんが、不動産賃貸業を行う場合において無断転貸は大きな問題となり得る行為であり、これを規制するための制度もあります。
不動産賃貸業や不動産投資を行う上で、トラブルを未然に防ぐためにも無断転貸に関する知識を身に着けておく必要があるでしょう。
不動産業界における無断転貸の問題点とは?
自らが所有しているアパートやマンション、戸建て家屋などの建築物や土地などの不動産を、自らが貸主となって賃貸し、賃貸料金(賃料・家賃)を得る事業のことを不動産賃貸業といいます。
貸主と借主の間で賃貸借契約が結ばれることで不動産賃貸が成り立っています。
仮に自らが所有する不動産の無断転貸が行われていたとして、借主から正当な賃料が得られるのであれば問題無いのではないか?と考える貸主も居ます。
不動産賃貸業や不動産投資を行う上で「賃料が入ってきているかどうか」という点だけを重要視すると、そう考えてしまっても仕方ないかもしれません。
賃料を滞納するような人に貸してしまったり、借り手が居ないまま空室のままにしておくよりも、無断転貸であっても賃料をちゃんと支払ってくれる人と契約できるのであればその方が良いという考えは、儲けを優先した考え方としては間違っていないかもしれません。
しかし、無断転貸であることを知りながら黙認していたり放置してしまうと、予期せぬトラブルを招く可能性が高まります。
そもそも無断転貸がなぜ起こるのかを考えてみると、納得ができるでしょう。
通常、アパートやマンションなどを賃貸借契約する際には入居審査が行われます。
賃貸料を支払える能力があるかどうかはもちろんですが、同じ建物や周辺の住民とトラブルを招くような不安が無い人物かどうかを審査します。
つまり、契約する人物が入居審査に通らない不安要素がある場合に無断転貸を活用しており、主に不法滞在の外国人や反社会的勢力に属している人などが該当します。
これらの人物が入居していると、近隣住民とのトラブルはもちろん賃貸物件内の風紀が著しく乱れる原因ともなります。
無断転貸を放置してしまうと、いつの間にか『問題を抱えた身元不明の第三者』が住んでしまっているという危険性があるという認識を持たなければいけません。
無断転貸を見つけたらどうすれば良いの?
無断転貸がトラブルの原因となることが分かりましたが、実際に無断転貸されている事実が分かった場合にはどうすれば良いのでしょうか?
賃貸借契約は民法よって様々なことが定められており、無断転貸に関する条項もあります。
無断転貸及び無断譲渡に関しては、民法第612条に定められており、対応についてもこの条項に従うことになります。
民法第612条
1)賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2)賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
この様に、賃借人による賃借権の無断譲渡及び無断転貸の禁止と、違反行為がなされた場合の賃貸人の解除権について規定されており、無断転載が確認できた場合には契約を解除する権利が賃貸人にあります。
これは賃貸借契約書に無断転貸を禁止するといった項目が含まれていなかった場合でも、無断転貸をすることが違法行為に該当するとしたうえで、契約を解除して退去を求めることができます。
さらに、無断転貸されている物件の家賃が滞納されている場合などは、無断転貸で入居している人物に対して滞納分の家賃を請求することもできます。
契約を解除する際の注意点は?
無断転貸が発覚すれば、民法第612条によって契約を解除して退去を求めることが可能になります。
だからと言って、無条件で契約が解除できる、強制的に退去させられるというわけではありません。
賃貸借契約は、貸主と借主の互いの信頼関係によって成り立っている契約です。
そのため、互いの信頼関係が損なわれているという事実があって初めて解除が認められるように、「信頼関係破壊の法理」というものがあります。
例えば、悪意があって無断転貸をしていたり家賃を長期滞納しているような、明らかに信頼を損なう場合でなければ賃貸借契約の解除を認めないという法理です。
具体的な例では、契約者である父親が他界した際に残された家族がそのまま生活していた場合、契約者が不在で無断転貸・譲渡された状態とも言えます。
しかし、事前に父親から残された家族の誰かが賃貸借契約を継続すると申し出があり承諾していた場合や、事後であっても残された家族から契約の継続を申し出られた場合には、契約の解除が難しいでしょう。
また、無断転貸が発覚したからと言って即座に契約を解除して強制的に退去させられるというものではありません。
法によって定められた権利を行使するためには法的措置を取りますが、面倒だからと無断転貸の放置を続けてしまうと貸主からの黙示の承諾があったとみなされてしまうこともあります。
こうなってしまうとトラブルが起こった場合でも契約解除が難しくなり、さらに大きな問題へと発展してしまいかねません。
もし無断転貸が発覚した場合は黙認せず、無断転貸を行っている契約者や入居者と問題の解決へと進まなければなりません。
無断転貸が発覚した場合の対処は?
無断転貸の事実が発覚した場合には、まず弁護士に相談することが勧められます。
賃貸借契約は民法に規定された内容に従うことが多く、無断転貸の契約を解除する場合を含め多くの場合で法律に関わる専門家に相談する場目があります。
無断転貸に関わるトラブルが当事者だけでスムーズに解決することは珍しく、無断転貸の事実を否定されたり、入居者には黙示の承諾だと言われたりと、あらゆる対向手段を使ってこられることが想定されます。
そんな相手に対向するには専門家による戦略的な対応が最良となるため、弁護士へ相談することが最良となるのです。
また、無断転貸は用意周到に行われている可能性が高く、専門家でも準備を整えるために様々な手順や時間が必要になります。
そのため、無断転貸が発覚した場合はできるだけ速やかに対処をしなければいけませんし、怪しいと感じた時点で動きだしておく方が良いでしょう。
無断転貸を予防するには?
無断転貸は様々な問題が起こる可能性があり、解決も強制退去などで終わりというわけにはいきません。
未然に無断転貸を防ぐため、予防策をしっかりと行っておくことが大切です。
無断転貸を防ぐための予防策は、大きく分けて2つあります。
賃貸借契約書に無断転貸・無断譲渡を禁止する旨を明記する
いくら民法に規定されているとしても、賃借人がそれをしっかりと認識しているかどうかが大切です。
賃貸借契約書にしっかりと明記しておくことで周知し、無断転貸が禁止されている行為であることを認識してもらいましょう。
また、転貸を検討している場合は事前に通知することを義務付けたり、違反行為があった場合は契約を解除する旨も契約書に明記しておくことで、無断転貸を防ぎ、万が一の際に解決をスムーズに行えるようになります。
入居審査を入念に行う
入居審査だけで「無断転貸をしそうかどうか」まで判断することはさすがにできないかもしれません。
しかし、書類の内容や勤務先、賃料と収入のバランス、そして当人の人柄などもさまざまな要素が判断材料となります。
特に常識に欠けていたり応対に不審なところがあったりと、信頼関係を築けないと感じたらその他に問題は無かったとしても入居を断ることも必要です。
悪質な無断転貸は絶対に許さない!
不動産賃貸業を行っていると、無断転貸による問題には必ずと言って良いほど遭遇します。
無断転貸によって入居した第三者が問題を起こし、既存の住民や近隣住民とトラブルを起こしてしまうと問題はどんどんと大きくなっていきます。
いくら法律が味方になってくれると言っても、発覚したら迅速に対応する、弁護士などの専門家に相談しやすい態勢を整えておく必要があります。
もちろん、未然に防ぐための対策が最も有効になります。
不動産賃貸・投資を円滑に行うため、無断転貸対策は常に心がけておきましょう。
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