新薬師寺で行われるおたいまつ(修二会)とは
奈良県奈良市高畑町に、新薬師寺というお寺があります。
このお寺ではおたいまつ(修二会)と呼ばれる行事が行われるのですが、どのような行事なのか、どういったお寺なのかを紹介していきます。
イベントの参加を検討している人は目を通してみて下さい。
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担当者:古川真史
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今年も開催予定されている
最近は新型コロナウイルスの影響で、イベントが中止になることが多いです。
しかし、奈良県奈良市高畑町にある新薬師寺で、2023年4月8日土曜日、午後17時からおたいまつ(修二会)の開催が予定されています。
奈良時代の最盛期と言われている天平時代から行われている伝統的なイベントです。
懺悔や厄除けを祈願することで汚れを祓い、国家の平和を祈ります。
さらに病気の平癒や健康を願うイベントでもあるのです。興味のある人は参加してみてはいかがでしょうか。
新薬師寺へのアクセスは、JR奈良駅か近鉄奈良駅から車で10分、公共交通機関を利用する場合には、市内循環バスで新薬師寺道口(破石町)というバス停で下車します。
おたいまつ(修二会)が行われる新薬師寺
おたいまつ(修二会)が行われる新薬師寺とは、どのようなお寺なのか気になる人もいると思います。
そこで「新薬師寺とはどのようなお寺なのか」「参拝の案内」「新薬師寺の本尊」「おたいまつ以外の行事」について見ていきましょう。
新薬師寺とはどのようなお寺なのか
薬師寺と新薬師寺はよく似ている名前ですし、同じ奈良県奈良市に存在しているのですが、実は違うお寺になります。
薬師寺は平安遷都の際に、現在の場所に移されたお寺であり、移される前は奈良県橿原市に存在していました。
そのため、橿原市にあったときは、薬師寺ではなく本薬師寺と呼ばれています。
本薬師寺は680年に建てられたお寺で、天武天皇が皇后の病気平癒を願って建設されました。
しかし、天武天皇が存命中には建設が終わらず、文武天皇の代になってから堂宇が完成したのです。
そして元明天皇の時代に現在の場所に移されました。
それに対して新薬師寺というのは、747年に光明皇后が建設したお寺になります。
建設した目的は聖武天皇の病気平癒を願ってのことです。
さらに薬師寺と新薬師寺では宗派も異なっているので、全く別のお寺と考えるのがよいでしょう。
双方とも病気平癒を願って建設されたというところは同じになります。
新と付けられているのは、あたらしいという意味ではなく、あらたな薬師如来を祀るという意味になります。
新薬師寺は建設当時から現在の場所にありましたが、今では規模が当時と比べて縮小されているのです。
当時はかなりの広さを誇っており、現在の奈良教育大学の敷地全体に及ぶ広さがあったと言われています。
東大寺ほどの広さではありませんが、かなり広かったことがわかるでしょう。
しかし、災害などで徐々に規模が縮小してしまい、本堂以外は鎌倉時代以降に再建された物となってしまいました。
本堂は奈良時代の物ですが、建設当時の物ではありません。
建設当時は金堂が建てられており、今とは違う風景だったのです。
参拝の案内
新薬師寺は東大寺の近くに位置しているため、観光に来た際に訪れる人も多くなっています。
そこで新薬師寺の参拝の案内を少し紹介させていただきます。
まずは拝観料ですが、個人で拝観する場合と、団体で拝観する場合とで料金が異なります。
個人の場合は大学生と大人が600円、高校生と中学生が350円、小学生が150円となっています。
団体の場合には50円引きとなりますが、小学生の場合は30円引きとなります。
団体料金があることでもわかるように、休日は観光客がたくさん訪れるお寺です。
平日でも季節によっては修学旅行生が来て賑わいを見せています。
次に参拝時間ですが、午前9時から午後5時までです。
休業している日はありませんので、いつ来ても参拝することが可能です。
受付を済ませて南門を入ると鐘楼があり、そのすぐ近くにトイレも設けられているので、ゆっくりと時間をかけて見て回っても安心できます。
新薬師寺の本尊
お寺には本尊が存在していますが、新薬師寺の本尊は薬師如来坐像です。
木造建築の仏像で、奈良時代に作られたと言われています。
像高は約191メートルあり、現在では国宝となっています。
目を大きく見開いており、左手には薬壺を持っているのが特徴です。
堂々とした姿であると同時に、ふくよかで穏やかな見た目をしているのも特徴だと言えるでしょう。
新薬師寺には薬師如来坐像以外にも、十二神将像が存在しています。
十二神将像は十二支を意味しているのですが、薬師如来坐像の穏やかな見た目とは異なり、怒り狂った表情をしているという特徴があります。
十二神将像も奈良時代に作られた物なのですが、波夷羅大将の像だけは後世に作り直されているのです。
そのため、他の十二神将像は国宝となっているのですが、波夷羅大将の像は国宝になっていません。
他にも本堂に安置されている香薬師如来立像、裸の姿をしているおたま地蔵、平家にゆかりがあると言われている景清地蔵もあります。
おたいまつ以外の行事
新薬師寺ではおたいまつ以外にもイベントが行われています。
そのイベントは初薬師なのですが、1月8日の薬師の日に実施されています。
初薬師は新薬師寺だけで行われているイベントではなく、薬師如来を祀るお寺では大半のところで行われるイベントです。
なぜこのようなイベントが行われるようになったのかというと、昔は今ほど医療技術が発達していませんでしたし、医師による処置や薬をもらって養生することができるのは、貴族など裕福な人達だけでした。
一般の人は医師に頼るのが難しかったため、寺院で病気の平癒や健康を願うことを大切にしていました。
1月8日に新薬師寺など薬師如来が祀られている寺院に参拝するようになったのは、毎月8日に薬師如来の教えを説く講義が行われていたためだと言われています。
その教えが現在でも語り継がれ、8日を薬師の日、1月8日は初薬師としてイベントが開催されているのです。
おたいまつ(修二会)について
おたいまつ(修二会)とは何のことなのかというと、本尊の前で天下泰平を祈るイベントです。
大松明と呼ばれる長さ7メートルの物が10本、籠松明と呼ばれる物が1本、それぞれ僧侶を先導して本堂を回ります。
正面にある三面の扉が開かれ、僧侶の行進に合わせて雅楽が演奏されます。
ちょうど桜の時期に演奏されるので、気候によっては桜が舞う中でのイベントとなり、見応えがあります。
灯明によって照らされた薬師如来と十二神将が、松明を通してその姿が浮かび上がるのはとても幻想的です。
行進が終わると僧侶が本堂に着席し、散華の奉納と導師の祈りが行われます。
最後に導師が今年1年の平和と五穀豊穣を祈り、イベントは終了となるのです。
2023年もおたいまつ(修二会)が行われる予定となっていますが、内容や時間帯などが変更になる可能性もあるので、事前に新薬師寺の公式サイトなどを確認しておくのがよいでしょう。
まとめ
病気平癒や健康を祈願するために行われるおたいまつ(修二会)は、壮大なイベントとなっています。
奈良県奈良市にある新薬師寺で2023年も開催される予定なので、1度見てみたいという人は訪れてみてはいかがでしょうか。
新薬師寺は奈良時代に創建された歴史のあるお寺なので、おたいまつ(修二会)以外にもいろいろと見どころがあります。
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