【大和三道「上ツ道・中ツ道・下ツ道」とは?】古き良き奈良の古道について解説
奈良の古道・大和三道(上ツ道・中ツ道・下ツ道)って何ですか
古道といえば東海道、中山道などの五街道が有名ですが、奈良県にもいくつかの古代道路があるのをご存知でしょうか。
しかも古代から都として栄えてきた奈良です。
奈良時代・・・いえそれ以前にすでに完成していた古道が存在するかもというのは容易に想像できますね。
山の辺の道もそのひとつ。
現在はハイキングも兼ねて訪れる観光客もたくさんおられる、古代史好きの憧れの地となっています。
今回はそんな古代道路のうち、山の辺の道・・・ではなく、山の辺の道とほぼ平行に存在していた大和三道を紹介します。
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賃貸専門家:古川 真史
資 格:宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士
奈良在住25年以上。宅地建物取引士・賃貸経営管理士の資格保有。ルームアドバイザーとしてのキャリア18年以上の大ベテラン。不動産賃貸の関連はすべて媒介経験あり。奈良出身ではないのに奈良まほろばソムリエ検定(奈良通1級)取得する奈良への溺愛っぷり。奈良マニアの古川より独自な目線で賃貸情報を多数お届けします。
大和三道とは?
大和三道とは大和の古道とも呼ばれ、奈良盆地の中央より東を南北に平行に並んだ三本の縦貫道となっています。
これらの道は7世紀の「日本書紀」が編纂された頃には完成していたとみられます。
利用目的などについて詳細は不明ですが、三本の道はそれぞれ東から順に『上ツ道』、『中ツ道』、『下ツ道』と呼ばれ、当時相次いで造営された宮殿や寺院、貴族の邸宅などの建築材料を運搬するために利用されていたと考えられています。
大和三道は現在も主要な交通路としても役割を果たしつつ、昔の面影もチラリとのぞかせています。
上ツ道の見どころはどんなところ?
大和の古道のうち最も東側の山麓側に位置し、国道169号線天理街道とJR桜井線の間に並行して通る道がこの上ツ道で、上街道とも呼ばれています。
主な経路は奈良市の奈良町(元興寺界隈)~帯解、天理市の櫟本~丹波市~柳本、桜井市の三輪~慈恩寺となり、葛城の二上山と桜井の三輪山を結ぶ横大路あたりで終点となります。
それより南は飛鳥や伊勢街道につながり、初瀬詣でやお伊勢参りに向かう道として機能していたとされています。
今も残る上ツ道の名残
天理市南部~桜井市あたりにはかつて官道として機能していた痕跡が残っており、発掘調査によると当時の道路幅は43mに及ぶと考えられています。
今ではすっかり細い道となっておりますが、飛鳥~奈良時代には重要な役割を担っていた道であることがうかがえます。
また、ところどころに街道の街並みの面影を残す風景が見られ、古い町並みが好きな方にとってはたまらなく魅力的なスポットがみられます。
上ツ道の見どころ
上ツ道(上街道)の出発点から終点まで歩くとなるとかなりの距離にはなりますが、見どころはたくさん。
上ツ道はJR桜井線と並行に通っているため、行きたいスポットだけを選んで散策することも可能です(ただし、電車の本数は少ないです)。
・猿沢池(奈良市)
奈良公園南西に位置する猿沢池は奈良の観光において昔からマストともいえるスポット。
池のほとりに座って水面を眺めていると心癒されるのではないでしょうか。
その近くに流れる率川の中州には舟にたくさんのお地蔵さんが乗っているように見える率川地蔵尊があります。
このお地蔵さんたちは周辺の河川工事の際に見つかったお地蔵さんを集めて祀ったとされています。
・ならまち(奈良市)
町屋建築がたくさん残るエリア、ならまちです。
タイムスリップしたかのような異空間にも見えますが、町家を生かしたカフェやギャラリーが多く、ならまちの中を散策するだけでも充分楽しい時間が過ごせます。
・帯解寺(奈良市)
皇室の女性がご懐妊された時の安産祈祷を行うお寺として有名ですが、この帯解寺付近の街並みは上街道の名残を強く残す町並みとしておすすめです。
・丹波市町・柳本町の古い町並み(天理市)
かつて参道としてにぎわった旧宿場町の風情が残り江戸時代の雰囲気が今でも感じられます。インスタ映えするスポットもありますよ。
中ツ道とはどんな道?
上ツ道と下ツ道の間約2.1kmの所を並行して通る道が中ツ道です。
現在の奈良県道51号天理環状線とほぼ同じ道ともいえます。
平城京と藤原京を結ぶような形で位置しており、また南は香具山を迂回し橘寺まで通じるところから、近世には橘街道と呼ばれていました。
平安時代には吉野詣ででにぎわったそうで、かの藤原道長も吉野詣でのために中ツ道を利用していたことが『御堂関白記』に記録されています。
中ツ道の遺構
2013年に天理市で舗装されていたと思われる遺構が見つかっています。
幅約23メートルあり、平安後期まで使用されていたと思われます。
この時の発見が中ツ道に関する遺構としては史上初だったとか。
残念ながら中ツ道は上ツ道や下ツ道にくらべ、当時を思わせる形跡が少ないのですが、さらに新しい発見があるかもしれません。
下ツ道今も残る遺跡とは?
大和の古道の最も西側にあたり、藤原京と平城京を結ぶ道で現在は国道24号線として機能している道が下ツ道です(天理市~橿原市間)。
奈良時代には飛鳥・藤原京と平城京をまっすぐ繋ぐ主要道路として盛んに利用されていたようです。
平安京遷都後はすたれてしまいましたがやがて近世には中街道と呼ばれ、郡山や二階堂、田原本、八木へと続く道となりました。
現在は国道24号線としてさまざまなお店が立ち並ぶ賑やかな道になりましたね。
今も残る下ツ道の遺跡
大和郡山市にある稗田・若槻遺跡や八条北遺跡から下ツ道の当時を知る手がかりが見られます。
稗田・若槻遺跡では下ツ道を横切るような形で流れる人工河川に大きな橋げた跡が見つかっています。
さらにその周辺では祭祀に使用されていたと思われる遺物も多数見つかっており、下ツ道が奈良時代において主要道路であったことがうかがえます。
また、八条北遺跡では運河があったと思われるような遺跡も見つかっています。
下ツ道のみどころ
・羅城門橋付近(大和郡山市)
この橋付近にかつて平城宮跡の入り口、羅城門がありました。
羅城門と朱雀門をつなぐ朱雀大路は幅75メートルもある巨大メインストリートで、当時は羅城門付近で外国の使節を迎えたり、雨ごいなどの宗教行事が行われていました。
現在は羅城門橋から北を眺めると朱雀門と復元した大極殿の屋根が重なって見え、その景色は奈良県景観資産として登録されています。
・稗田の環濠集落(大和郡山市)
外敵と洪水から村を守る環濠集落の中でもほぼ完全な形で残っているのが稗田の環濠集落です。
集落内の町並はまるで迷路のよう。
周囲の水路のほとりに座って休憩もできます。癒されます。
・近鉄二階堂駅周辺
二階堂駅近くにも街道の雰囲気をにじませた街並みが存在します。
また、駅より南には桜並木もありますので、桜の季節におすすめです。
・近鉄田原本駅周辺の街並み
駅周辺には多くのお寺とかつて栄えていたと思われる古い建築の家並みが見られます。
・八木札ノ辻
下ツ道と横大路の交差点がこの八木札ノ辻。
この付近にはお伊勢参りの旅人が利用した宿が多数ありました。
うち、ほぼ当時のまま残されている旅籠が現在は八木札ノ辻交流館となっています。
八木や今井町の散策の拠点として利用されています。
【大和三道「上ツ道・中ツ道・下ツ道」とは?】まとめ
大和の三道についてはまだまだわからないこともたくさんありますが、古代の重要な交通路であり、近世では街道として栄えていたことはそれぞれの道の遺構からも伝わってきますね。
特に上街道の上ツ道、中街道の下ツ道沿いは昔ながらの街並みが今も色濃く残っており、古い町並みが
好きな方にとっては写真を撮りたくなるスポットがたくさんあるのではないでしょうか。
ならまちや今井町とはまた違った雰囲気が楽しめると思います。
参考文献「街道の日本史 奈良と伊勢街道」 木村茂光・吉井敏幸著 吉川弘文館
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