神話の時代から受け継がれる奈良の名物『そうめん』
古来より奈良が発祥とされている食べ物は数多くあります。
それは1200年以上前の奈良時代に遣唐使が奈良に伝えた食べ物がルーツとなっているものが多いからです。
中でも全国で知られる「そうめん」は、現在も奈良県中部の桜井市でその伝統が受け継がれています。
Web担当者:西村貴文
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想像以上に多い奈良が発祥の食べ物
奈良が発祥と言っても実際にその食べ物が発祥とされるのは古代の奈良、つまりは“大和”の国です。
たとえば、清酒、お茶、饅頭、うどん、豆腐といった食べ物は奈良で生まれたという記録が残されており、その多くは遣唐使が中国から伝えたものであったり、奈良に多く集まる寺や神社で生み出された食べ物など様々です。
都が置かれていたこともあり、庶民には手の届かないような宮中でのみ嗜まれていた食べ物も多くあります。
今回ご紹介する「そうめん」も、元となったのは奈良時代に遣唐使が伝えた食べ物です。
練った小麦粉を、焼く、茹でる、蒸すなどの調理法で食べられるようにする「唐菓子」が日本に伝えられました。
その中でも、小麦粉と米粉を練って縄状に伸ばした「索餅(さくべい)」がそうめんの原型と言われています。
索とは縄のことで、小麦粉を使うことから日本では「无岐奈波(むぎなわ・麦縄)」と呼ばれていました。
また、索餅の伝来とともに中国の習慣も併せて伝来しています。
古代中国では7月7日に熱病で亡くなった帝の子供が霊鬼神になり熱病を流行らせたため、生前にその子供が好きだった索餅をお供えしたところ熱病が治まったと言われています。
そのことから「7月7日に索餅(そうめん)を食べると1年間無病息災で過ごせる」という言い伝えになり、現在も七夕の日にそうめんを食べる習慣が残っています。
索餅は伝来当初から平安時代頃までは宮中の儀式や饗宴に用いられる希少品だったため、こういった習慣も上流階級だけで言い伝えられていました。
そうめん発祥の地 奈良県桜井市三輪
そうめん発祥の地である奈良県桜井市三輪には、そうめん誕生の伝承が残されています。
三輪に鎮座する大神神社(おおみわじんじゃ)の初代宮司の子孫である大神朝臣狭井久佐(おおみわのあそんさいくさ)の次男に穀主(たねぬし)という人物がいました。
飢饉と疫病に苦しむ民の姿に心を痛めた穀主は、肥沃な三輪の地が小麦の栽培に適していることを知ります。
三輪の地で育てた小麦と三輪山の清流で保存食であるそうめん作りを始め、地域の生業として発展させたとされます。
こうした伝承もあり、大神神社のある三輪は「そうめんの故郷」とされ、全国のそうめん作りの関係者から篤い信仰を受けています。
毎年2月5日にはそうめんの卸値相場を占う卜定(ぼくじょう)祭が行われるなど、そうめんとの深いかかわりがあることが分かります。
ここまでは伝承のお話ですが、実際に索餅が現在のそうめんの形になったのは鎌倉時代と言われています。
中国から新たな製粉技術がもたらされ、受け継がれていた「生地に油をつけて伸ばす」という製麺技法を合わせることで、太い縄状だった索餅から細いそうめんへと変化していきました。
鎌倉時代に伝わった技術で一気に進化した索餅は、室町時代には「そうめん」の名で呼ばれるようになり、江戸時代中期には現在とほとんど変わらない製法が確率していました。
それまでは切る手間を省いて長いままだったそうめんを、現在と同じ約19センチの長さに切りそろえる様になったのもこの頃と言われています。
西暦1754年に刊行された『日本山海名物図会』には「三輪素麵」のことが記されており、多くの旅人が往来する伊勢街道筋にあった三輪の地では多くの旅籠でそうめんが出されたことで、その美味しさが口づてに広まったと言われています。
現在の三輪素麺はどうやって作られてるの?
三輪から製法が伝わり全国各地で作られているそうめんですが、その発祥の地である三輪では「三輪素麺」のブランドは奈良県三輪素麺工業協同組合によって定められた厳格な基準のもと、高い品質を保持しています。
三輪素麺は、機械化された工程は新しい設備を導入しつつ、現在でも手延べ製法を守り続けています。
製麺の工程は2日間かけて行われ、その2日間の天候によって塩分濃度を調整した水で小麦粉を捏ねます。
そうめんの製法には欠かせない油を塗る工程と撚りをかけて延ばす工程に加え、「ウマシ」と呼ばれる熟成の工程を行います。
小麦粉に水を加えて練ると粘り気のある「グルテン」という物質ができあがりますが、撚りをかけ、延ばし、熟成(うまし)を行うことでグルテンが結合して網目状に整列します。
この状態が、三輪素麺に欠かせないコシの強さとのどごしの良さを実現します。
通常、麺の直径が1.3ミリメートル以下のものをそうめんと規定していますが、三輪素麺には太さによる等級別の種類があります。
それぞれ等級順に「神杉(かみすぎ)」、「緒環(おだまき)」、「誉(ほまれ)」とあり、標準的な等級の誉が一束(50g)あたり約350~400本ほどに対して、最上位等級の神杉は一束あたり約600本、直径は0.3~0.5ミリメートルという細さになります。
細ければ細いほど麵につゆが絡み、のどごしの良さも格別のものになります。
さらに三輪素麵には長い熟成期間を経た古物(ひねもの)があり、2年以上熟成させたものは「大古(おおひね)」と呼ばれ、新物よりもコシが強く茹で延びしにくい「瑞垣(みずがき)」なども製造されています。
神話に語られる奈良の名物「そうめん」
全国各地に名物はあっても、神話の時代から語り継がれる食べ物というのはそれほど多くはありません。
日本山海名物図会に書かれた一文に「大和三輪素麺 名物なり 細きこと糸の如く 白きこと雪の如し ゆでてふとらず 余国よこくより出づるそうめんの及ぶ所にあらず」とあり、そうめん発祥の地で作られる三輪素麺の質の高さは江戸時代には全国に轟くほどです。
今もなお高い品質にこだわる三輪の職人の手によって作られる三輪素麺を、一度は本場で召し上がってみてはいかがでしょうか。
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